米アップルがスマートフォン「アイフォーン(iPhone)」や携帯メディアプレーヤー「アイポッドタッチ(iPod touch)」向けのアプリ内広告サービス「アイアド(iAd)」を立ち上げてから1カ月半が経った。
自社広告ネットワークから米グーグルなどのライバルを締め出そうとする動きなどが取り沙汰され、市場独占の問題が懸念されていたが、当初の予想に反して活気のないスタートとなったようだ。
アップルの厳しい管理に戸惑う広告主
アップルが6月の時点で発表していたアイアドの参加企業は、日産自動車、米AT&T、米シティグループ、英蘭ユニリーバ、米ウォルトディズニースタジオ、仏シャネル、米J.C.ペニーなど17社。
しかし米ウォールストリート・ジャーナルの記事によると、このうち7月の1カ月を通して広告を出したのは、日産自動車とユニリーバのみ。
その後、シティグループやウォルトディズニー、百貨店チェーンのJ.C.ペニーが新学期シーズンに向けた広告キャンペーンを始めたが、ほかはまだ具体的な動きはないという状況だ。
なぜこのようなことが起きているのか? 理由は、広告制作に関してアップルが厳格に管理しており、その新手法に広告主や代理店がなじめないでいるからだ。
アップルのモバイル広告には多くの時間と労力を要し、ブレインストーミングから完成に至るまでに2カ月から2カ月半かかると制作会社の幹部はこぼしている。
シティグループも、アップルの技術や広告プラットフォームに不慣れだっため、同社と緊密に連絡をとり、一つひとつ確認しながら作業を進める必要があったと話している。
こうした中、少なくとも1社が計画を見送ったようだとウォールストリート・ジャーナルの記事は伝えている。その企業とはフランス高級ブランドのシャネル。同社は現時点で計画しているキャンペーンはないと答えており、これはアップルの先の発表内容と異なっている。
「不穏なスタートに失望している」とアプリ開発企業幹部
アイアドでは、アプリの画面下部に広告枠が現れ、ユーザーがそれをタップすると広告が画面全体に広がる。そこからキャンペーン映像や地図を表示したり、ダウンロードコンテンツを販売したりできる。
ユーザーは開いているアプリから離れる必要がないため操作が煩雑にならなくて済む。開発者にとってはユーザーをアプリ内に引き留めておけるという利点がある。