本記事はLongine(ロンジン)発行の2014年10月17日付アナリストレポートを転載したものです。
執筆 笹島 勝人
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投資家に伝えたい3つのポイント

●アメリカばかり見ていたので、G20会議で指摘された世界経済の減速リスクはサプライズでした。特に欧州のデフレ化が懸念されているようです。
●日本の教訓から不良債権と金融危機を脱するには、Ⅰ.危機感の醸成、Ⅱ.流動性危機と公的資金投入、Ⅲ.古典的不良債権の処理、の3つのステージを経る必要があります。
●欧州はまだステージⅢで本格回復には時間を要するか、そうでなければ域内主要国・ECBの行動が今以上にカギとなりそうです。

「世界経済はそれほど良くない」というG20会議のサプライズ

先日、G20財務大臣・中央銀行総裁会議(以下、G20会議)が開かれました。各メディアの報道では、世界経済の低迷や下振れが強く認識されたとありました。私の率直な感想は、「世界経済って、そんなに悪いのか」というものでした。何故なら、世界経済をけん引するアメリカでは雇用の回復が鮮明で株価も上昇が続き、この10月には量的緩和が終了します。その余波で日本も、円安・株高も進みました。しかし実際には、IMFがG20会議に先立って世界経済の見通しを前回2014年7月から、2014年3.4%→3.3%、2015年4.0%→3.8%へと下方修正しました。日本はそれぞれ1.6%→0.7%、1.0%→0.8%と大幅な下方修正が話題となりました。

ユーロ圏では「デフレと日本化」を懸念

ただ、懸念の大きさの点ではIMFもG20会議も、ユーロ圏に軍配が上がるようです。IMFの見通しも、それぞれ1.1%→0.8%、1.5%→1.3%へ下方修正されています。日本よりも成長率が高いのに懸念が大きいのは、彼らが経験していないデフレに陥るリスクが指摘されているからです。ECB (欧州中央銀行)は、日本のデフレを研究しているという話もあります。中小企業などリスクが高い先に対する、銀行の貸し渋りも問題視されており、対策としてECBは民間銀行から預かる資金に対しマイナス金利を導入しています。デフレに陥ってしまうと不良債権問題に直結するので、欧州では景気低迷の長期化、つまり「日本化」への恐怖感が高まっているのでしょう。IMFの経済見通し、G20会議を境に、世界の株式市場では大幅な下落が続いています。