先週、EUが、2030年までに温室効果ガスの排出量を1990年比で40%削減するという目標を掲げたことを書いた(「地球温暖化対策:足並みは永遠に揃わない?」)。

 EUの首脳たちは、12月にペルーで開催される第20回目のCOP(気候変動枠組条約締約国会議)でこの意欲的な目標を提示し、CO2削減に乗り気でない国々を説得するつもりなのだ。

心もとない米中のCO2排出削減目標

大気汚染アプリに米大使館データの削除命令、北京市

スモッグが立ちこめる北京市内〔AFPBB News

 ところが11月12日、CO2の最大排出国で、かつ、その削減に乗り気でないことで有名なアメリカと中国が、APECの行われている北京で突然スクラムを組み、独自の新しい削減目標を発表した。

 夜のニュースで、オバマ大統領と習近平首席がにこやかに握手をしている映像を見たドイツ人はビックリだ。あたかもこの2国が、将来の気候変動防止政策の旗振り役となりそうな図ではないか。

 現在、世界のCO2の排出量を見ると、中国とアメリカの2国だけで全体の42%以上を排出している。中国は全体の25.5%、アメリカは16.9%だ(2011年IEA調べ)。

 中国は途上国扱いなのでCO2削減の義務はなく、アメリカも、各国に削減を義務付けた京都議定書を批准しないまま、2001年には離脱してしまっている。そのうえ、この2国はこれまで地球の温暖化問題ではEUと対立し、CO2削減努力の足を引っ張り続けてきたという経緯がある。

 発表された内容はというと、中国は、CO2排出の増加を、遅くとも2030年までには止めるというもの。今までは削減どころか、目標もなければ、約束もしなかったのだから、大いなる進歩ではある。それに加えて、再生可能エネルギーの割合も20年までに15%に増やすつもりだそうだ。

 ただ問題は、中国は将来のエネルギー需要の膨張を見越して、現在、原発だけではなく、石炭の火力発電所も多く建設中だということ。12年に新設された石炭火力の設備容量だけで約5400万kW。日本の全発電設備量は2億kWだから、その4分の1を超える容量が1年で増えているということになる。

 現在、発電の80%は石炭火力。どのようにしてCO2の排出量を2030年で頭打ちにすることができるのか、それがよく分からない。

 一方アメリカは、温室効果ガスの排出量を、2025年までに05年比で26%から28%削減するという目標を提示した。

 政府関係者は「歴史的な一歩」とオバマ大統領の決定を褒め称えているが、これに強制力を付けるには、ワシントンに持ち帰って議会を通さなければならない。今のオバマ民主党にその力があるかどうか、これも分からない。

 とはいえ、この米中CO2サプライズは、単なる思い付きではなく、9カ月も前から二国間で秘密裏に進められていたものだという。そして最後は、このAPECの会議中に、オバマ大統領と習主席が詰めて発表に至った。

 しかし、アメリカ本国では、共和党がすでに断固反対しており、オバマ大統領が近々退くにあたって、実行不可能な法律を置き土産にしようとしていると非難轟轟。アメリカはいつまで経っても変わらない。