3月17日、パリで交通規制が行われ、車とオートバイは奇数のナンバープレートを付けている車輛しか通行ができなかった。例外は、1台に乗客が3人以上乗っている車と電気自動車、そして、タクシー、救急車、および、生活に必要な物資を運ぶ車だそうだ。

世界で最も大気汚染が深刻な都市、世界保健機関

大気汚染抑制のため自動車運転規制を実施したパリ〔AFPBB News

 交通規制の理由はひどくなり過ぎたスモッグ。つまり、車輛規制は市民の安全を保持するための措置だ。代替の交通手段として、地下鉄やバスなど公共の交通機関が無料で開放された。ニュースでは、霞んでしまったエッフェル塔の写真が好んで使われていた。

 その前週、パリでは、空気中の微粒子状物質であるPM10やPM2.5の量が、5日間続けて規制値を上回ってしまったという。そこで、現在、連立与党に加わっている緑の党が、車輛規制の音頭を取ったらしい。それを、野党と自動車連盟が、不公平で愚かな措置であると非難している。

2種類ある粒子状物質の違い

 フランス与野党の争いはこの際どうでもいいが、しかし、ドイツ人にとって意外だったのはパリのスモッグだ。実は、私もこんなに近くにいながら知らなかった。それも、パリだけではないらしい。

 ドイツのメディアがまたまた大げさに国民を怖がらせている可能性もあるが、ニュースを読むと、同じ時期、リヨン、ボルドー、カーン、ルーアン、グルノーブル、ル・マン、トゥール、ランスと、軒並みPM値が基準を超えたと書いてある。

 それに対して私たちが一様に発した疑問が、「え—? 原発の国でスモッグ?」

 スモッグは中国やインドのように、石炭を燃やして、その煤煙をフィルターにもかけずにモクモク出しているところで起こるのであって、フランスは発電の8割近くが原発だから大丈夫と、思い込んでいたのだった。

 しかし、パリのスモッグを見ると、問題はもっと複雑なようだ。そもそも、今、大きな問題になっているPMとCO2は、分けて考えなければならない。大気汚染の原因は多岐にわたるのだ。

 大気中に漂っている物は粒子状物質(エアロゾル)と言われ、μm(マイクロメートル)という単位で測られる。1μmは、1mmの1000分の1だ。つまりPM2.5といえば、粒子の半径が2.5μm以下の物で、限りなく小さい。

 自然起源の粒子状物質は、太古の昔より存在したそうだが、しかし、今、問題になっているのは、そのような悠長なものではなくて、難なく肺の奥にまで入っていき、循環器系や呼吸器系の障害を引き起こす物騒な代物だ。粒子状物質については、日本エアロゾル学会がまとめてくれた、素人にも分かり易いページがあるので、興味のある方はご覧ください(「PM2.5に関して頻繁に寄せられる質問」)。