モスクワの町を歩いていつも感じるのは、個人商店が少ないということである。
そもそもロシアに中小企業は存在しなかった
市内中心部にあったお菓子屋 半年ほどで閉店した(筆者撮影、以下同じ)ルイノック(バザール)の露天商や街角のキオスク(売店)、あるいはアパートの地下にあるようなプロダクティ(食品雑貨店)は個人経営が多いと思われる。
しかし、例えば日本でよく見かける駅前のすし店のような「家族経営」の飲食店というものには、とんとお目にかからない。
このところロシアではドミトリー・メドベージェフ大統領の陣頭指揮の下、イノベーション、特にハイテク産業振興に力が注がれ、モスクワ近郊スコルコボのシリコンバレー構想などに注目が集まりがちだ。
しかし、実はロシア政府は国内産業構造多様化のために中小企業振興にも力を入れている。
ロシアの中小企業は、日本の中小企業とは全く異なる経緯を歩んできた。そもそもロシアには中小企業は存在しなかったのである。 その始まりはさほど古いものではなく、1980年代、ソ連のペレストロイカの時代である。
この時、行き詰まった計画経済の打開策としてコーペラティフという組合形態、家族経営の中小企業が初めて認められたのである。
絶えず荒波にもまれ続けたロシアの中小企業
地下鉄や地下道に並ぶキオスク。女性下着店もこのコーペラティフの多くはソ連崩壊(1991年)、90年代初頭の大混乱の中で消滅していった。
生き残った企業のほんの一握りはその後、オリガルヒとして新興財閥化するが、ほとんどの企業は生き残るのが精一杯という状況であったに違いない。
その後も1998年の金融危機、そして2008年の世界経済危機とロシアの中小企業は絶えず荒波にもまれ、結果的にロシア経済に占める中小企業の割合は極めて小さいものとなっている。
従ってロシア経済の大部分を占めるのは、民営化されたとはいえ旧国営企業の流れをくむ大企業がほとんどである。
これら大企業は雇用者数で見ても大きな割合を占めるため、たとえ経営が非効率であったとしても雇用維持の観点から中央・地方政府は、相対的に手厚い保護を加えざるを得ないのである。
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