電子取引(eトレード)の成長は、国際的な商取引を根本から変えた。これまで世界市場にアクセスする手段を持たなかった企業や組織が、国境を越えた売買を手がけるようになったからだ。
このオンライン取引の急速な発達は、サプライヤーと消費者の双方にとって、情報へのアクセスと透明性が向上したことに起因する。両者にとってインターネットは、ほんの数年前までそうした取引を阻害していただろう地理的、言語的、文化的障壁を乗り越えさせてくれるものだ。
国境をまたぐ電子商取引に特化した包括的なデータは存在しないが、消費者がオンラインショッピングを心から楽しんでいるのは明白だ。世界貿易機関(WTO)によると、1999年には世界でおよそ3億人の人がインターネットにアクセスでき、そのうち25%近くの人がその年にオンラインで買い物をし、電子商取引の総額が1100億米ドルに上ったという。
2014年末までには、ほぼ30億もの人がインターネットにアクセスしている。そのうち40%の人がオンライン商取引に参加し、全世界の企業対消費者(BtoC)の売上高は、国内取引と国際取引を合わせて1兆5000億米ドルを超えると予想されている。
より多くの人がインターネットにアクセスできるようになるにつれ、今はオンライン上の企業対企業(BtoB)市場のざっと10分の1ほどしかないBtoCの電子商取引の成長ペースが速まると見られている。世界経済の屋台骨である中小企業は、ICT(情報通信技術)によって与えられたポテンシャルをつかむことができれば、国内市場のみならず国際的にも莫大な恩恵を得られるだろう。
インターネットアクセスの先
国際貿易を含めた電子商取引の全般的な成長を支えている最も明白な要因は、インターネットアクセスの拡大だ。しかし、ある国のeトレードがその潜在性をフルに発揮するかどうかを決定するうえで一定の役割を果たす要因はほかにもたくさんある。
本リポートを作成するにあたって、我々はこれらすべての要素のデータをまとめ、ICTで可能になる商取引の潜在性を生かす準備度についてG20諸国(別組織としての欧州連合=EU=を除く)をランキングした「G20 eトレード準備度指数」を作成した。
全体的な投資環境は、本指数で測った1つの要素である。eトレードは新たなビジネスチャンスを生み出し、昔からある事業の障壁を多少取り除くが、古くからあるいくつかの課題は残る。
特に中小企業にとっては、資金へのアクセスがしばしば参入障壁や成長の制約として挙げられている。多くが中小企業である電子商取引会社も例外ではない。国内金融市場がもたらす制約に加えて、国は外国投資を制限する保護主義的な措置を課すことがある。
通信インフラもeトレードにとって良い投資環境を作る重要な要素である。本指標でトップにつけたオーストラリアは、全国ブロードバンド網(NBN)を通じ、インターネットアクセスに長期的なコミットメントをしてきた。様々な技術を使うことが必要になるNBN計画の遂行については懸念もあったが、政府の明確なコミットメントは、オンラインビジネスやサービスの成長を促すのに十分だった。
国がeトレードの潜在性を引き出す能力に貢献するもう1つの要素として、インターネット環境がある。これはインターネットアクセスの質と、インターネットの可能性をフルに利用する市民の能力を意味する。特に、人口が多く地理的に多様な発展途上国は、eトレード経済のニーズを満たすためのインフラを整備し(供給)、人的資本を築く(需要)うえで困難に直面する。