過日、バルト3国とポーランドを縦断・南下する約1800キロのバスツアーに参加した。ほとんど高低差のない平原続きで日本の県境よりも特徴のない国境は、シェンゲン条約で通関手続きも不要で、いくつもの国家を通過したという実感を持ち得なかった。
国防の視点で見ると、安全保障に敏感にならざるを得ない地勢上の理由があり、今は世界遺産として珍重される城や要塞などが必要不可欠であったことが分かる。
ツアーには札幌や福岡、長野などからの参加者もいたが、多くは首都圏からで男性9人、女性13人であった。
家庭の主婦たちこそ常識の持ち主
旅の直前に塩村文夏都議への野次問題があり、小論「女性都議に飛ばされた野次が考えさせた問題」として論考を加えたが、まだすっきりしない面があった。
「サンデー毎日」(7月13日号)では女性の大学教授や元アナウンサー、少子化ジャーナリストなどが、都議はその場でもっとセクハラ発言を譴責すべきであったとか、結婚・出産は女性の義務でなく権利などと語っていたが、少し違うのではないかという疑問が付きまとった。
1日の旅から解放された夕食時は、ビールやワインなどの力も作用して、旅のことばかりでなく、結婚や出産などについても聞くチャンスがあった。
バス移動中はツアー・ディレクターの話があったり、ミュージカル「サウンド オブ ミュージック」が上映されたりした以外は、かなりの時間を話し合いに充当することができた。
中でもクラコフからワルシャワへの帰路3時間余は、1等席特急列車で乗客も我々だけという感じで、1両をほぼ借り切った形となり、座席を変えながら女性たちとじっくり話し合うことができた。
50代の女性はわずかでほとんどが60代、しかも数人の独身者を除き子供2人、3人を育てたご婦人で、「少子化問題」と騒がれること自体に素朴な疑問を持つ人も多かった。
話していて分かったことは、あれこれ高尚な理論で思索するまでもなく、夫婦は子供2人を生むのが当然といわんばかりの女性が多かったことである。旅先での気楽さや、恥じらいを感じる年でもないということもあろうが、率直に話し合えたように思う。
子供の誘拐や殺人、特に親殺しや子殺しなどが聞かれない日はないくらいで、もう昔の日本ではないようになってしまった感じだと言う人も多く、ましてや同棲(婚)や淑(しと)やかさがみられなくなった若い女性への疑問もしばしば聞かれた。