7月31日付けのブルームバーグによれば、米格付け会社スタンダード・アンド・プアーズ(S&P)はアルゼンチンの格付けを「選択的デフォルト」に引き下げた。アルゼンチン政府が債務再編後の新債券130億米ドル(約1兆3300億円)相当への利払い猶予期間が過ぎても返済を履行できなかったことを受けたものだ。

S&P、アルゼンチン国債を「選択的デフォルト」に格下げ

米ニューヨークで記者会見するアルゼンチンのアクセル・キシロフ経済財務相(2014年7月30日撮影) ©AFP/Stan HONDA〔AFPBB News

 米国裁判所はアルゼンチンがデフォルト債保有者に返済しない限り新債券への利払いを禁じているため、同国は5億3900万米ドルを債券保有者に送金することができなかった。

 国際スワップデリバティブズ協会(ISDA)は今月1日、アルゼンチン国債のクレジット・デフォルト・スワップ(CDS)でクレジットイベント(信用事由)が発生したと認定し、事実上のデフォルトを宣言した。

 長年、東南アジアで仕事をしているとアルゼンチンの出来事は対岸の火事のようにも感じられるが、「経済破綻」と言えば、1997年7月にタイを中心に始まった通貨危機とその後のインドネシア経済の混乱が思い起こされる。

 アジア通貨危機が発生した当時、インドネシアは、経常赤字、外貨も不足気味で、外国資金に依存して経済成長を続けていた。通貨危機で外国の短期資金が一斉に引き揚げたことに伴い流動性不足に陥って経済が破綻し、通貨ルピアが危機に直面した。

 国内ではインフレが発生して、食品価格の急上昇とそれに対する暴動を引き起こした。32年間にわたって独裁者としてインドネシアを統治していたスハルト大統領は中央銀行の最高責任者を解任された後、結局、大統領職を辞任した。

 今年、インドネシアでは新大統領ジョコ・ウィドド氏が誕生する。最近、通貨ルピア安にもかかわらず高成長・低インフレを続けるインドネシアは、海外直接投資資金のフローも高水準だ。

 しかし、中東情勢の悪化に伴う原油価格の上昇懸念でさらなるルピア安圧力が高まっており、ルピア暴落のリスクも否定できない。現実に原油価格が高騰すれば、政府のエネルギー補助金がさらに膨らみ、財政悪化にもつながるかもしれない。

 本稿では、インドネシアのマクロ経済リスクを念頭に入れつつ、アルゼンチンの過去の事例を簡潔に振り返り、あらためて今後のアジア諸国への教訓を探りたい。