中国当局が、第2次大戦中の日本軍将兵に対する戦争犯罪裁判の資料を公開し始めた。中国の多数の新聞が、裁判資料の中には「日本軍による中国人民の大量殺害、強姦、奴隷化、拷問」などの生々しい“告白”が記載されているとして、その内容を掲載している。

 だが、米国のニュースメディアは、この「再公開」を中国共産党による「醜い反日キャンペーン」と見なし、日本を叩いて国民のナショナリズムを煽ることは逆に共産党政権への非難につながる可能性がある、と指摘している。

大々的に公開される45人の戦犯の供述

 中国当局の重要資料を保存する中央公文書館は、7月3日から、かつての日本人戦犯の「供述書」の内容の公開を始めた。

 中華人民共和国当局は、日中戦争での日本側の戦争犯罪者として、1950年の時点で1100人以上の身柄を拘束した。そして56年から軍事裁判で裁き、うち45人を重要戦犯として種々の有罪に処した。

 今回のキャンペーンは、その45人の戦犯の供述を改めて公開するものだ。7月3日から8月15日の日本の降伏の日まで毎日1人分の供述を公開している。この供述はこれら被告の取り調べ中の「告白」だとされる。

 国際的な司法の慣行では、一度、裁かれた事例や被告は、再び裁きの対象になることはないという「一事不再理の原則」が確立されているが、今回の中国当局の措置は、70年以上も前の「犯罪」を60年ほど前の「供述」を基に再び糾弾する行為に等しい。

 今回、中国当局によって7月下旬までに再公開された「戦争犯罪の供述書」には、以下のような具体例が含まれていた。

・日本陸軍の一将校(原文は実名を公表)は1938年から45年までの間に、中国民間人700人以上を殺し、39人の女性を強姦し、2人を生体解剖したことを認めた。

・日本軍の一高級将校(同上)は日中戦争中、中国軍の捕虜600人以上を日本軍の銃剣術の「教材」として部下に殺害させた。