2009年、農業界は農業ブームに沸いた年でした。このブームは、同年初めに発行された雑誌「BRUTUS(ブルータス)」(マガジンハウス)の特集「みんなで農業」から始まったとされています。筆者の書いた新規就農関連本が3月に過去最高の増刷部数を記録した上に、執筆依頼や取材も毎週のように舞い込んできた記憶があります。

 ただ、この時のブームは私自身、そして多くの人が考えていたほど大きなムーブメントにはならなかったように見えました。

 3月の自著の大増刷の知らせを受けて、これくらいの部数が毎月売れたら、フェラーリやランボルギーニとまでは言いませんが、ポルシェや日産GT-Rくらいは買えるかもしれないと期待していたのです。しかし、捕らぬ狸の皮算用で終わってしまいました。この分野で10万部売った本があるなんて話も聞きませんし、実際のブームは3カ月くらいだったのではないでしょうか?

 その年の年末には、筆者の個人的な関心はブームそのものよりもブームの影響に移っていました。一見、空前とも思えた農業ブームは、単なるブームで終わったのか? それとも新規就農者を大量に増やすことになったのか? 農水省統計が出るのが楽しみだったのです。

 結果はと言うと、翌年の2010年も、そのまた翌年の2011年も、新規就農者数はほとんど増えませんでした。しかし2012年に、新規就農者の中でも「新規参入数」(実家が農家ではない新規就農者)は前年対比43.3%と急増します(「平成24年新規就農者調査の結果」、農林水産省)。ブームに影響されて、迷いつつも決断し、就農先を探し、移住まで持ってくるのに2年というのは、慎重に準備していれば十分にかかる時間です。

 この記事が読者の目に触れるであろう7月25日あたりには、2013年の新規就農者の統計が出ていると思われます。さらに新規参入者が大幅に増えているようなら、2009年の農業ブームは新規就農者確保に大きな貢献をしたと言えるでしょう。とはいえ、それでも新規就農者は絶対数が足りません。