経営のためのIT活用実学

本社が偉くなってはいけない
システムのグローバル展開格上、格下をつくらず「いいところ」取りで

2014.07.23(水)  横山 彰吾

サッカーのワールドカップでは、全32カ国が熱い戦いを繰り広げた。各チームの戦い方のみならず、応援の仕方、テレビに映る各国の地元の様子などを見て、国民性の違いを改めて感じることもあったのではないだろうか。

 今、多くの日本企業がグローバル化の流れの中で業務やITの見直しに直面している。それは、テレビで見た通り、国民性が大きく異なる人たちを相手にする仕事でもある。日本国内でのビジネスでも、相手によって仕事のやりやすさは大きく異なる。グローバルビジネスともなると、とても同じレベルでは語れないほど、仕事の難しさは一気に増す。

 筆者が日本企業のグローバル対応(市場分析や営業力強化など)の支援に注力し始めたのは、10年近く前である。新興国市場が急成長している頃だったが、企業の仕組みが追い付かず、業務プロセスとシステムをあわてて見直している段階だった。

 当時は、「長年培ってきた日本のベストプラクティスで新興国市場を切り開く」という話が多かった。だが、最近はかなり様子が変わってきている。

本社の先を行っている新興国拠点のシステム

 先日、ある会社のCRMシステム強化を手伝うことになった。その会社では、アジアの拠点の1つがすでにCRMシステムを導入して活用していた。そのシステムに、本社主導で新たな機能を加えて、さらなる活用を図るのだという。

 そのときの現地側の反応は、筆者のこれまでの理解をはるかに超えるものだった。

 現地では、すでに導入時のシステムを十分に使いこなしていた。今は、現地の他システムとの統合を図って、より業務を効率化していくことを考えているという。

 現地のスタッフから「日本で類似する経験はあるか?」と聞かれた。それに対して「残念ながらその経験はない」と答えると、「日本のシステムは、ここ数年まったく進化していないのではないか?」と言うのだ。

 その拠点がつくられたとき、スタッフは基本的なIT用語の解説が必要なレベルだった。日本の本社はその国をいわば「格下」だと見なしていた。しかし、ここ数年でその国の市場が大きく成長するとともに、拠点のIT部門は独自にシステムを進化させ、ユーザーのリテラシーも大きく高まった。いつの間にか日本側の本社よりも問題意識のレベルが上回っていたのである。

米国本社から発せられた日本支社への「通達」

 次は、ある米国系の外資系企業の事例だ。米国の本社から日本支社に、本国で使っているツールを導入するよう通達があった。日本支社はそれを採用せざるを得ない。

 ところがそのツールは日本市場ではほとんど導入実績がなかった。もちろんサポート体制も未整備である。問い合わせは英語で行わなければならない上、対応時間もまったく読めない。とても日本での実務で通用しない代物であった。

 日本には、同様の機能を持つ日本製のツールが存在する。しかし、本社からの通達を無視して導入することはできない。このガバナンス(統制)スタイルを堅持していて、変化の激しいビジネスに対応できるのか、IT活用レベルを底上げできるのか、筆者には極めて疑問である。

 このケースでは、米国本社から見ると日本は出先の1つに過ぎない。いまだ根強い欧米本社の「格上」意識を実感する出来事であった。

「いいところ取り」で全体を最適化する

 今や凄まじいスピードで各国の市場と企業が変化をしている。どの国が「格上」か「格下」かなどと言っている場合ではない。前述のケースのような、一方通行のナレッジの移転や、強制力を働かせたガバナンス型は通用しない。

 そこで必要となるのは、本社か支社か、発祥の地はどこか、などを問わず、優れたものがあれば共有するという、いわば「いいところ取り」の姿勢だ。つまり、国ごとの市場拡大の勢いに合わせて、ベストプラクティスをそれぞれの国にフィードバックするのだ。

 これまで企業が情報システムをグローバル展開する際は、主に個別最適と全体最適のバランスが論じられてきた。だが、その軸だけで答えを出すのには限界がある。「共通プロセスや共通システムを極力皆で使いましょう」という考え方はいわば旧式の全体最適である。

 これからは、「いいところ取り」の考えでよいものを還流させて、結果的に全体を最適化しよう、という発想に変えていく必要があるだろう。

 本社の役割も変わってくる。自分たちが持っている解決法を広めていくのではなく、各拠点が持っている最適解を見つけ出す仕組みを運営する方に軸足が移ってくる。

「本社」「国内」を絶対視しないこと

 その際にカギとなるのが、本社がある国を絶対視しないことだ。

 各国の担当者が一堂に会してミーティングを行う際に、「本社に召集する」というスタイルに固執すべきではない。その時点で上下関係が成立してしまうからだ。

 組織構造やマネジメントの範囲の括り方も注意を要する。「(本社のある)国内」と「海外」と分けていると、やはり「いいところ取り」にバイアスがかかる。国内も含めてグローバルなのだという解釈が求められる。

 例えば、ある企業はIT関連予算を「グローバル」と「国内」に分けているが、国内販売向けの予算はグローバル枠の中に組み込んでいた。予算の枠組みの設定には、会社のマネジメントの姿勢が顕著に表れる。このような考え方の企業は、自然な形でグローバル対応をしていると言えよう。

 システムは常に最先端である必要はない。サッカーではないが、常に世界のトップを走り続けることは難しい。まずは現在のシステムの能力を十分に引き出し、各国の「いいところ」を探し出すことである。

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