FIFAワールドカップ・ブラジル大会決勝は、延長にもつれ込む熱戦の末、ドイツが4度目の優勝を果たした。常に上位の成績を挙げてきたドイツだが、優勝ともなると、東西統一へと向かう直前、西ドイツとして参加した1990年のイタリア大会以来。今回同様、アルゼンチンを決勝で下してのことだった。

理性を失したアスリートたち

英心理学者、スアレスのかみつきは「幼少期に起因」

ウルグアイのルイス・スアレス選手〔AFPBB News

 多くのスター選手の活躍に沸いた大会だったが、開催国ブラジルがネイマールを負傷で欠いてから失速したのは残念だった。

 しかし、今大会、最も世界の興味をひいたニュースは、ウルグアイのエース、ルイス・スアレスの噛みつき事件かもしれない。

 対イタリア戦で、ジョルジョ・キエッリーニの肩に噛みつき、当然のごとく退場。エースを欠くウルグアイは決勝トーナメント入りしたものの敗退した。

 こうした理性を失した行為をスポーツの現場で見ることは少なくない。2006年ドイツ大会決勝でのジネディーヌ・ジダンの頭突き、スアレス同様相手に噛みついたマイク・タイソンなどなど、挙げ出したらきりがない。

チャーリー・シーンのテレビシリーズ「Anger Management」

 どんな事情があるにせよ、もたらす結果は明白なのだが、何かしらの突発的状況を前にして、反射的な怒りをあらわにしてしまったアスリートたちが犯した「失敗」の数々を世界は見てきた。

 普段は陽気だが、試合となると闘志むき出しとなる阪神タイガースの剛腕ジーン・バッキー投手が、王貞治選手への危険球をめぐる乱闘で右手親指を骨折、その後勝ち星を挙げることなく現役生活を終えたのもその一例。

 同様に、試合中、怒りからバットをへし折り負傷、それがもとで選手生命を絶たれてしまった元メジャーリーガーを、実際よく「キレる」チャーリー・シーンが演じる「Anger Management」は、同じ原題の映画『N.Y.式ハッピー・セラピー』(2003)をベースとした大人気シットコム(Situation comedy)。

 どちらの主人公も、暴発する怒りをコントロールする術を身につけるため、「アンガーマネジメント」トレーニングを受けている。

 音楽も理性を取り戻すツールとなり得る。「Anger Management Tour」は、エミネムを中心としたラッパーやロッカーたちが行ったコンサートツアーだが、その名の通り、彼らの音楽は若者たちの怒りを発散吸収する役割を果たした。