台北は今日も雨だった。毎日鬱陶しいくらいに雨が降る。台湾の専門家と安全保障の問題を議論するために来てみたら、土砂降りの雨なのだ。台湾の人々の語る話が、雨だれの音にかき消されそうなほどだ。

 台湾をめぐる安全保障環境の厳しさは、日本の比ではない。わずか150キロ程の距離しかない対岸には、少なく見積もっても1100発にのぼる中国人民解放軍第2砲兵の様々な弾道ミサイルが控えている。

 そのような過酷な状況で、どうすれば台湾の未来を描けるのだろうか。そんな大きな疑問を抱いて、羽田空港からわずか3時間40分ほどのフライトで台北市内にある松山空港に降り立った。

 そして、またもや筆者の浅学非才さを恥じ入ることになる。なぜなら、台湾の若者たちは、ひょっとすると大人が抱く深刻な悩みを突き抜けたところに、すでに立っていたからだ。

 そう、本稿でお伝えしたいのは、この3月に中国と台湾の間の貿易サービス協定に突如反対して、台湾立法府を占拠するという実力行為に出た「ひまわり運動」がもたらすかもしれない台湾の未来のことだ。

台湾当局を動かしたひまわり運動

 この6月25日には、史上初めて中国本国から台湾関係を担当する張志軍台湾事務弁公室主任が台湾に来訪し、台湾側大陸委員会の王郁琦主任委員との間で、閣僚級の対話が行われた。そこでは台湾のひまわり運動関係者100人程がこの閣僚級対話に反対して、桃園空港近くの張志軍主任が泊まるホテル前で座り込みなどの抗議運動を行った。

 また27日には訪問した高雄市において、張志軍主任は反中の台湾市民にペンキを投げつけられ、結局、予定を早めて中国に帰国することになった。

高雄市を訪問した張志軍主任にペンキが投げつけられたことなどを一面で報じる台湾紙。筆者撮影