7月1日、安倍内閣は自公合意に基づく「武力行使の3原則」を閣議決定する予定だ。

 この閣議決定では、武力行使を個別的か集団的かの区分けはせず、「我が国に対する武力攻撃が発生したこと、又は我が国と密接な関係にある他国に対する武力攻撃が発生し、これにより我が国の存立が脅かされ、国民の生命、自由及び幸福追求権の権利が覆される明白な危険があること」が武力行使の発動要件とされる。

 これによって、日本は集団的自衛権の行使に公然と踏み出すことが可能になった。

戦場に行くのは若き自衛隊員

 当然のことながら、もし武力行使ということになれば、その戦場に出向くのは首相や閣僚、政治家ではない。若き自衛隊員だ。この間、自公両党間であれやこれやの議論が交わされてきた。毎日のように報道される内容を見ても、まるで言葉遊びをしているようにしか見えなかった。本当に、こんなことで若者を戦場に向かわせることができるのか。自民党や公明党の議員は、改めて胸に手を当ててもらいたいと願う。

 元防衛事務次官の守屋武昌氏は、その著書『「普天間」交渉秘録』(新潮社)の中で次のように述べている。

 「自衛隊はインド洋派遣でもイラク派遣でも一発の銃弾を撃つこともなく、また隊員を殉職させることもなく任務を終えることができました。しかし、国の中央で参加五原則が維持されている地域や非戦闘地域と認定していても、現場は流動しており、脅威や危険のないように完璧を尽くすことは難しいことでした。隊員にとっては突発的にテロに巻き込まれ、生命が危険にさらされる可能性を覚悟しながらの勤務となりました。帰国後、自衛官16人が自殺しているという事実があります」

 正直、これを読んだ時には衝撃を受けた。守屋氏は自殺の原因などには言及していないが、文脈から推測すれば海外派遣とも何らかの関わりがあったケースもあるのであろう。「戦闘地域には行かない」「武力は行使しない」という大原則の下でも、自衛隊員にとって過酷な任務であり、様々な角度から大きなプレッシャーがかかっていたということだ。