中国の改革はどこへ向かおうとしているのだろうか。中国社会の現状を見ている限り、その方向性はまったく見えてこない。
2013年11月、共産党中央三中全会で市場経済改革を深化させることが決定された。しかし、中国経済の実態は市場経済とは逆の方向へ向かっているように見える。李克強首相が就任当初から唱えたのは「規制緩和」(deregulation)と「地方分権」(decentralization)だった。だが、政府によるコントロールと国有企業の力は強まる一方である。
中国経済の実態を如実に反映しているのは、中国の株式市場の株価である。上海の株式市場の株価総合指数は2007年の6170ポイントをピークに下落し、それ以降、2000~2100ポイントのレンジで推移している。
これまでの35年間、中国が奇跡的な経済成長を成し遂げられたのは、政府の市場管理の成果ではなく、企業、とりわけ民営企業が政府の管理と規制を果敢に突破し、努力した結果だと言える。政府が規制を強化すれば景気は不安定化し、逆に政府が規制を緩和すれば景気は好転し安定する。中国における景気と政府規制の因果関係は、あらためて実証する必要もないほど明らかだ。
中国は2001年に世界貿易機関(WTO)に加盟した。しかし、世界の主要国は中国が市場経済であるとはいまだに考えていない。これを先進国の偏見だと言うことはできない。まず、中国では知的財産権が十分に保護されていない。また、国有企業の独占によって市場メカニズムの調整機能は阻害され、経済政策の策定や市場競争に関するルールなども著しく透明性を欠いている。すなわち、中国は確かに市場経済ではない。
かといって中国は計画経済でもない。では、中国はどのような経済なのだろうか。一部の研究者は中国経済を「混合経済」と表現している。市場経済の要素と計画経済の要素が混ざっている経済という意味であろう。
中国の「混合経済」の特殊性
近代以降、100%自由な市場経済はおそらく存在しないと思われる。同様に、100%統制されている計画経済も存在しないだろう。
北朝鮮は厳しく統制されている計画経済だが、それでも闇の自由市場が存在する。民主主義の先進国では、基本的に自由な市場経済になっているが、政府がコントロールする公的部門が同時に存在する。したがって、既存のすべての経済は混合経済と言える。