「あなたの運転手さんは大丈夫か?」。2014年6月23日、昼食を一緒した韓国の中堅企業のオーナー会長が、別の大企業役員にこう尋ねた。別の会合でも、「運転手」が話題になった。現職国会議員と運転手との間で、なんとも奇妙なバトルが起きているのだ。

 2014年6月11日、仁川選出の現職国会議員から地元警察に、こんな通報があった。

 「議員の車の後部座席にあったかばんが盗難に遭った。現金2000万ウォン(1円=10ウォン)も入っていた」

窃盗疑われた運転手、かばんを持って出頭した目的は「内部告発」

 地元警察はさぞ仰天しただろう。すぐに捜査に乗り出した。当日午後に、急用ができたと言って「早退」した専属運転手がすぐに疑われた。

 防犯カメラに、運転手がかばんを持ち出す場面が映っていて、盗難事件はすぐに落着かと思われた。

 ところが、翌日、事態は急変する。この運転手が、大反撃に出たのだ。なんと、かばんを持って仁川地検に出頭したのだ。「自首」したのではない。「不法政治資金の証拠物だ」と「内部告発」するためだった。

 これだけでも、奇怪な話だが、さらにこの事件にはいろいろな疑惑が出てきた。

 この議員は翌週になって、韓国メディアにこう説明した。

 「いろいろな問題があるので、弁護士と契約しようとして家にあった現金を持っていた」

 ところが、この「釈明」はすぐに裏目に出る。運転手が地検に持ち込んだかばんに入っていたのは、2000万ウォンではなく、3000万ウォンだったのだ。金額も知らずに持ち歩いていたのか? 

統一地方選挙の「公認お礼」か?

 弁護士費用に現金を用意するのもおかしいが、金額も知らなかったかばんということで、運転手が告発したように「不法政治資金」、つまり、誰かからもらった「裏金」ではないかという疑惑が深まってしまった。

 韓国メディアは、6月4日の地方選挙で当選した地方議員関係者からの「公認お礼」ではないかと報じている。

 この事件を機に、この議員の周辺でさまざまなことが起きていたことが分かった。