5月の初め、EU司法裁判所が、インターネット上での市民の権利を強める判決を出した。ネットの検索で出てくるリンクに対して、当該の個人が、それをプライバシーの侵害であると思った場合、削除を要求できるというものだ。忘れてもらう権利も人権の1つであるというのがEU司法裁判所の考え。

EUの「忘れられる権利」判決にリンク削除の申請が殺到

 そこで、検索システムを運営している企業は対応を迫られることになった。

「忘れられる権利」グーグルへの削除要請、初日に1万2000件

グーグルはリンクの削除要請を個別に精査し、司法裁判所の判断で提示された要件を満たすかどうか見極めるとしている〔AFPBB News

 検索システムはいろいろあるが、90%がグーグルのシェアで、そこで、まずグーグルが5月30日に反応。サイト上にリンク削除の申し込みページが作られ、その申込書を使って、個人が、自分に関するリンクの削除を要求できる。その結果、第1日目だけで1万2000件の申請があったという。

 申請者は、削除してほしいリンクについて、なぜそれがプライバシーの侵害であるかの理由を述べ、身分証明書(EU共通・パスポートに準ずるカード型のもの)のコピーを添えて送信する。それが認められれば、そのリンクは2度と表示されることはない。

 ただ、初日は若干の躓きがあった。身分証明書のコピーを、私企業が保存するのは、これまた違法だそうで、その日のうちに、身分証明書ではなく、身分を証明できるもの、例えば免許証などでもよいことになった。申請は、これからまだまだ増えると思われる。

 EU裁判所の判決の対象者は、もちろんEU28カ国の国民だけだが、グーグルは自発的に、アイスランド、リヒテンシュタイン、ノルウェー、スイスの国民を追加した。

 日本でも、不本意なリンクで苦しんでいる人は少なくないと思うので、日本人も早急にこの権利を要求してしかるべきではないか。EU裁判所でこのような判決が出ている以上、それほど手間暇をかけずに削除は認められるような気がする。

 現在、ネット上では、考えられないようなひどい中傷や個人攻撃が行われている。書籍とは違って、無法地帯のようなありさまだ。残らないと錯覚してやっているかもしれないが、実は、永遠に残る。中傷される方は傷口が塞がらない。

 そのうえ最近は、離婚した相手や、元恋人に仕返しするため、仲睦まじかったときに撮ったプライベートな写真をネット上で大公開してしまう、リベンジポルノというのも流行っているそうで、油断も隙もない。

 一度ネット上に拡散した写真を消し去るのはほとんど不可能で、だからこそ、前述のEUの判決となったのだろう。