カンボジアの首都プノンペンに来ている(5月29日記)。気温は36度と、うだるような暑さである。ちょうど真夏の季節だ。旅の3日目というのに、すでに頭が少し朦朧としている。

 タイで突然起きたクーデターのせいで、バンコク経由のフライトを諦め、シンガポール経由で首都プノンペンへと到着した。プノンペンの市街は、大型の四駆とバイクであふれていて、ずいぶん平和な風景が拡がっていた。

 今回の訪問は、カンボジアの知識人たちと、最近の中国との緊密な関係や、ますます激化する南シナ海問題について意見交換をするのが目的である。

 アジアの友人たちからは、「カンボジアはもう中国の影響下にどっぷりとつかってしまっているので、どうしようもない」と、さんざん聞かされてきたこともあって、カンボジアの人々が日本人を前にしてどんなふうに話を切り出すのか、天の邪鬼の筆者には、むしろ募る興味を抑えての訪問となった。

日本をはるかにしのぐ中国のプレゼンス

 確かに、うわさに違わず、筆者が会ったカンボジア人の誰もが、こちらから一言も尋ねないのに、南シナ海問題で「カンボジアは中立な立場を取っている」と、開口一番切り出してくる。そして、誰もが、「カンボジアは小国なのだから、中立の立場を取るのはやむを得ないだろう」と畳みかけてくる。

 あるお役人は、最初から「2年前のASEAN議長国としての会議でのカンボジアの采配は適切なものだった。カンボジアの対応は何ら悪くない、フィリピンとベトナムの過去の主張はそもそも行き過ぎていたのだから」とずいぶんと言い訳がましい枕言葉で縷縷説明を始めたのには、少しまいった。

 そう、2012年にカンボジアがASEAN議長としてプノンペンで外相会議を行った際には、南シナ海問題の取り扱いをめぐって各国の意見が割れて、議長声明すら発出できなかったという失態を演じてしまったのである。