週刊NY生活 2014年5月17日490号

 ダウンタウンカルチャーの拠点でもあるイーストビレッジの老舗独立系書店「セント・マークス・ブックショップ」(3番街31番地1階)が来月上旬に引っ越すことになり現在、クラウドファンディング(インターネット上での資金調達)を呼びかけている。

 すでに不動産所有者と退室契約を結んだが、資金不足のため無事に移転できるかはクラウド・ファンディングにかかっている。締切は16日(日)で、目標金額5万ドルに到達していない。

 同書店は37年も続くイーストビレッジのランドマーク的な存在。2階にはサンライズマートもあり、日本人にとっても親しみのある場所かもしれない。

 店内には、デザイン、建築、写真、アート、神学、健康、政治、小説とさまざまなジャンルのユニークな書籍が並ぶ。これまでも家賃高騰が続き不動産所有者に抗議する署名運動などが行われてきたが、今年2月から資金集めをインターネット上で始めた。

 移転先は、市内で最も古い公営住宅(東3丁目136番地)で、広さは現在の半分ほどになるという。新店舗の内装やデザインは書店のファンである建築家の曽野正之さんとオスタップ・ルダケビッチさんが共同経営する「Clouds Architecture Office」が担当する。

 先月、「もう、閉めるかもしれない」と落ち込んでいたオーナーの姿を見かねたふたりが、設計を引き受けた。31日まで現状をインスタレーションで示す「This is how you disappear」(制作:Wolfgang Berkowski)を開催中。 棚に本がなくなる過程を白い厚紙で表現している。

 共同オーナーのボブ・コンタンさん(71)、テリー・マッコイさん(70)は高齢だが本や文化への強い情熱があり、今後も経営を続けたいと意気込む。ボブさんは「近くに日本食レストランも多く、アカデミックな日本人にもよく来てもらっている。クラウド・ファンディングを募って無事に移転したい」と語る。

 支援者には本のギフト券や年間割り引きなどの特典がある。詳細はウエブサイトを参照。

(前田真里、写真も)

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