今回の『中山泰秀のやすトラダムス』(5月11日放送/Kiss FM KOBEで毎週日曜24:00-25:00放送)では、米国のアジア太平洋重視戦略を取り上げたほか、ロシアとの北方領土問題、年内に施行される特定秘密保護法などについて語った。

日本もいざという時に備えておく必要がある

中山 JBpressが「弱体化した欧米:米国は何のために戦うのか?」という記事で、昨年秋に米国内で実施された調査において「米国は国際的に他国の問題に干渉すべきではない」と考える人が52%に上り、過去50年の調査で最高を記録したと伝えています。

 記事では尖閣諸島の問題やシリアへの軍事介入の撤回、ウクライナの混乱などをめぐる米国の姿勢から「弱腰」というメッセージが国際社会に伝わったと指摘。軍事費でも軍事経験でも他国を圧倒し、他の追随を許さぬ同盟ネットワークを持っている米国ですが、今は同国の戦う意志が問われると述べています。

 外交や国際政治に関心を持つ方の多くは、この記事に同感されるのではないでしょうか。かつて20世紀の冷戦を経てロシアの民主化が進み、米ソの東西対立がなくなり、右でも左でもない「中道政治」が流行りました。

 そうした中で米国のことを「世界の警察」と皮肉って言う声もありますが、自由主義・民主主義や法の下の平等という米国と共通の価値観を持つ同盟国の平和は、米国が守ってきた側面があるのも事実です。

 時代が変化し、ブッシュ政権からオバマ政権へと移行する中で、米国は兵員を削減して母国に返還したり軍備配置の転換を行っています。今、米国の国務省や国防総省の関係者と話をすると、皆がよく「リバランス(再均衡)」というキーワードを口にします。

 一方で米国の安全保障政策の指針となる「4年ごとの国防計画見直し(QDR)」によると、米国は戦略の重心をアジア太平洋地域に置いています。これはすなわち、米国がアジア太平洋地域における軍事的リスクの高まりを把握しているということです。

 我が国も、近隣諸国が軍事力をどんどん増強させている状況を考えると、これまでのように平和ボケで安心している場合ではありません。当然、戦争という過ちを二度と繰り返してはなりませんが、国家として国民の生命と財産を守るために、戦争を抑止するとともに、いざという時に備えておく必要があります。

ロシアにとっての北方領土は米国にとっての沖縄と同じ

 南シナ海のパラセル(西沙)諸島付近で9日、中国船がベトナムの漁業監視船に衝突し、ベトナム船の乗員3人が負傷する事件が発生しました。

 世界には領海・海洋資源をめぐりさまざまな対立があります。例えばロシアと中国との間に現在は解決済みですが、かつて国境紛争が存在しました。これは、ロシアと中国の国境線上にあった「ボリショイ・ウスリースキー島」の領有権をめぐり両国が長年にわたり交渉を続けてきた問題ですが、最終的に土地を50%ずつ折半することで合意に至りました。

 ロシアが狡猾なのは、相手国との利害関係を考えて具合が悪いと判断したら、一見対等な条件を持ち出してあっという間に問題を片付けてしまうことです。