4月16日、乗客乗員476人を乗せた韓国のセウォル号が横転し、沈没までには2時間半があったにもかかわらず174人しか救出されない大惨事が起きた。他人事と思えず、「何で、何で」と繰り返し、自問する以外になかった。

韓国船沈没、運航会社代表を拘束

沈没する旅客船セウォル号〔AFPBB News

 報道などからは乗員の操船や乗客誘導・避難の不適切、船長の責任感のなさ、運航会社の安全教育軽視や過重積載の慢性化、設計変更に伴う重心移動対処問題、さらには政治家を含む関係者の事故対処などが指摘されている。

 いずれも事故が発生するたびに指摘されてきたことである。しかし、歴代大統領の力をもってしても排除できなかった陋習で、こうした負の遺産を除去するには社会意識革命ともいうべきものが必要である。

 筆者は4月10日の拙論「日本の安全と北東アジアの平和のための論考~朴大統領は、社会改革で韓国の救世主となれ」で、政治改革以前の社会意識改革の必要性を強調したが、なお一層その感を強くする。

大事故を頻発させる韓国

 ここ20年間を見ただけでも、1994年にはソウル市の聖水大橋が崩落し、32人が犠牲になった。3日後には忠清北道の忠州湖で遊覧船が炎上し、30人の死亡・行方不明者を出している。

 翌1995年には地下鉄工事現場でガス爆発が起き、101人が死亡。その2カ月後にはソウル市でデパートが崩壊し502人が亡くなった。99年には仁川市の雑居ビルで火災が発生し、55人の犠牲者を出す。

 21世紀に入ると、2003年には大邱市の地下鉄で放火火災が発生し190人が死亡した。2008年には京畿道利川市の物流センターで爆発事故が起き、40人が犠牲となる。翌2009年には釜山市の室内射撃場で火災が発生して15人が死亡した。

 今年に入り、2月には慶州市郊外のリゾート施設で体育館の屋根が崩落し、10人が死亡する。続いて今回の全羅南道・珍島沖事故で、302人が死亡・行方不明となっている。

 こうした事故は韓国内で起きているばかりではない。1977年に韓国の建設会社がパラオで受注・工事した橋梁(全長約400メートル)は完成直後から中央部が凹み、補修や補強が行われたが基本的な手抜きはいかんともし難く、96年に真っ二つに折れて崩落した。

 本島から空港や発電所などがあるバベルダオル島へ向かう唯一の道路で電気・水道・電話などのライフラインが橋梁内に設置されていたためにすべてが切断された。困り果てたパラオの大統領は、請負企業が解散して存在しないために韓国政府に救いを求めたが、「関係ない」と突き放されたという。