サムスングループは2014年4月30日、グループ本部にあたる「未来戦略室」の大規模人事を実施した。社長、副社長、専務級で構成するチーム長人事を年末の定期役員人事の時期とは別に実施するのは極めて異例だ。

 グループ内外では4月17日に96日ぶりに海外から帰国した李健熙(イ・ゴンヒ)会長が大胆なグループ戦略を打ち出すとの見方が出ていたが、まず手をつけたのが、人事だった(2014年4月24日付「サムスン会長、96日ぶりに日本から帰国」参照)。

 サムスングループの未来戦略室は、グループ本部の機能を担っている。もともとは会長秘書室や構造調整本部、戦略企画室などと呼ばれていた。室長は副会長級が務め、そのもとにサムスン電子など電子関連事業を担当する戦略1チーム、それ以外の事業を担当する戦略2チーム、人事支援チーム、コミュニケーションチームなどがある。

 チーム長は、いずれも社長、副社長で、グループ全体の戦略を立案し、経営内容をチェックする役割だ。

慣例を覆す役員人事

 李健熙会長は、通常週に1~2回出社するが、この際、未来戦略室長、次長(社長)と長男でサムスン電子の李在鎔(イ・ジェヨン)副会長の3人から業務報告を受け必要な指示を出す。

 未来戦略室にはグループから選りすぐりの人材が集まっている。チーム長級の人事は、年末の定期役員人事と同時期に実施するのが普通だった。

 ところが、4月30日に突然、5月1日付人事が発表になった。

 崔志成(チェ・チソン)室長(副会長)、張忠基(チャン・ジュンギ)次長(社長)の2人と、金鍾重(キム・ジョンジュン)戦略1チーム長(社長)は留任したが、あとの5人のチーム長とグループの法務・コンプライアンスを担当する遵法経営室長の6人が一気に交代した。

 今回の人事の特徴は何か。

 まずは、先に触れたように「異例の時期」だったことだ。サムスングループの役員人事は、じっくりと手間をかけた人事考課作業を経て年に1度年末に実施することが慣例だ。それ以外の時期にもごくまれに役員人事があるが、業績の急速な悪化など「事業上の事故」に対応する場合がほとんどだ。

 グループ本部のチーム長人事を一気にこの時期に実施することは極めて異例だ。

 2つ目の特徴は、人事の規模が大きかったことだ。未来戦略室には、6つのチーム、1つの室、さらにタスクフォースである金融一流化推進チームと秘書・儀典などを手がける秘書チームがある。

 6チーム長のうち5人、さらに遵法経営室長、秘書チーム長を合わせた7人もの交代は大規模人事だ。