2014年4月17日午後、サムスングループの李健熙(イ・ゴンヒ)会長が東京発の専用機でソウルの金浦空港に降り立った。1月11日に出国して以来、96日ぶりの帰国だ。韓国メディアは長期外国滞在で新しい経営について構想を練っていたと報じている。その名も「マッハ経営」だという。

 「・・・本当に残念だ・・・」。空港で韓国メディアの記者からの質問に、李健熙会長はまずこう答えた。前日起きた旅客船「セウォル号」沈没事件について、沈痛な表情で短くコメントした。

会長の「本社出勤」は実に176日ぶり

 会長の周りには、長男でサムスン電子副会長の李在鎔(イ・ジェヨン)氏やグループ本部にあたる未来戦略室長の崔志成(チェ・チソン)副会長、サムスン電子の権五鉉(クウォン・オヒョン)副会長などグループ首脳が顔をそろえた。

 日本や米国などでの滞在が長期に及んだため、一部では健康悪化説が出ていた。記者がこの点を聞くと、「ご覧の通り、大丈夫です」とだけ答えた。顔色もよく、何よりも記者たちの前に姿を現したことは、こうした憶測を打ち消す狙いもあったようだ。

 帰国から5日後の22日、李健熙会長はソウルのサムスン電子本社に出勤した。以前は午前6時半ごろに1階ロビーに姿を現して記者の質問にも答えたが、この日は午前8時ごろ、地下の駐車場に到着し、そのまま執務室に向かった。「出勤」したのは、2013年10月29日以来、176日ぶりだった。

 李健熙会長はこの日、崔志成副会長からグループ全体の経営状況などの説明を受けた。その後、主要グループの社長以上の首脳を集めた昼食会で各社の状況について報告を受けた。最初の「出勤」ではもっぱら聞き役に徹したようだ。

 今後も、週1~2回のペースで出勤するとの見方があるが、韓国メディアや産業界の注目は、李健熙会長が帰国後、どんな言動をするかに集まっている。100日近くも海外に滞在していたことから、「新しい経営ビジョンを準備していた」との見方も多い。

 サムスングループ内では、外部から見るよりも危機感が強い。サムスン電子の業績は依然として好調だが、業績が伸び悩んでいるグループ企業も多いのだ。

低成長どころかマイナス成長に陥っているグループ企業も

 韓国公正取引委員会が2014年4月1日に発表した資料によると、サムスングループ傘下の74社の2013年単独決算の純利益の合計額は、前の年よりも4兆9000億ウォン(約4900億円、1円=10ウォン)も減少した。

 サムスン電子の圧倒的な収益力ばかりが目立つが、グループ全体で見ると、低成長どころかマイナス成長に陥っている企業も多いのだ。