(米「パシフィックフォーラム CSIS」ニュースレター、2014年30号)

By Bonnie S. Glaser

 東シナ海に関する台湾の外交は創造的で建設的であった。2012年8月、馬英九総統は尖閣諸島(台湾では「釣魚台列嶼」、中国では「釣魚島」)をめぐって高まる緊張に対処して「東シナ海平和イニシアティブ(ECSPI)」を提案した。

 この東シナ海平和イニシアティブは、「自制する」「係争を棚上げする」「国際法を遵守する」「東シナ海行動基準を制定する」「東シナ海の資源の共同開発を進める」などを骨子としている。

 台湾政府は日本と漁業協定を調印した際に、東シナ海平和イニシアティブがどのように履行されるべきかを具現化した。この取り決めは主権に関する見解の相違を乗り越えて、東シナ海における台湾漁民の操業権を保護したものであった。

 2014年2月に馬英九総統は東シナ海の領有権を主張する国に対して、予期せぬ誤算を防止し紛争を避け、平和と繁栄を目指すための行動規範を策定することを改めて表明した。また、領土問題の平和的解決へと道を開く天然資源の共同開発を進めることを、日本、中国、台湾に提唱した。

 この提言は日本と台湾の関係改善に有益であったが、日本と中国の尖閣諸島をめぐる緊張の高まりも同様に緩和する可能性がある。

台湾は国際法に基づいて南シナ海領有権の申し立てを

 一方、南シナ海においては、台湾に加えて中国、ベトナム、フィリピン、マレーシア、ブルネイなどが領有権を主張しており、近年それらの国の間で緊張状態が増大している。ところがその中で台湾はほとんど沈黙を続けている。