日本のメディアはこぞって「日米首脳の共同記者会見でオバマ大統領が、尖閣諸島に日米安全保障条約第5条が適用されると発言した」と大々的に報じた。

 「オバマ大統領は、アメリカの大統領として初めて、尖閣諸島にアメリカの日本に対する防衛義務を定めた日米安全保障条約の第5条が適用される考えを示し・・・」

 「オバマ大統領は、中国が領有権を主張している沖縄県の尖閣諸島に言及。『日本の施政下にある領土は、尖閣諸島も含め日米安全保障の適用対象になる』と述べ、武力衝突が起きた際は米軍が防衛義務を負うことを明言した・・・」

 「オバマ米大統領は24日昼、日米首脳会談後の共同記者会見で、沖縄県の尖閣諸島が日米安全保障 条約に基づく防衛義務の対象と明言した・・・」

 これまでもヒラリー国務長官をはじめ歴代の国務長官や国防長官それに軍首脳といったアメリカ政府・軍の公職に就いている人々だけでなく、元政府高官やシンクタンクの知日派と見なされている人々からも、繰り返し繰り返し「尖閣諸島は日米安全保障条約第5条の適用領域」との言質を取って喜んできた日本政府やメディアが、ついに大統領の口からこの言葉を引き出したために、あたかも目的達成とばかりに報道したようである。

「防衛義務」が与える印象

 それらのメディアの報道は、日米安全保障条約第5条がアメリカに“日本防衛義務”を課した条項であると断言しているが、「防衛義務」という表現を無批判に使用するのは、嘘あるいはデタラメとまでは言えなくとも決して適正な報道姿勢とは言い難い。

 一般的に「義務」という語には、法律や規則や契約などに基づき、あるいは道徳や倫理などの観点から、「しなければならないこと(あるいはしてはならないこと)」という意味がある。したがって上記の文脈で「防衛義務」と言うからには「日米安保条約第5条が適用された場合には、アメリカは条約という国家間の約束に基づいて、必ず日本を防衛しなければならない」ということになる。そして、当然のことながら武力による侵攻に対する防衛である以上は「アメリカも武力を行使して反撃する」という意味を持つことになる。