先週のハイライトは何と言ってもバラク・オバマ米大統領の国賓訪日だろう。夜東京に着いて2泊し、昼前にソウルに向け出発する「国賓ライト」バージョンではあったが、それでも「国賓」には違いない。米大統領訪日となれば議論はその成果に集中する。されば今回はオバマ大統領訪日の勝者と敗者について考えてみたい。

割れる内外の評価

オバマ大統領、3日間の訪日を終了 次の訪問国 韓国へ

訪日日程を終えソウルへ向かうオバマ大統領を見送る天皇・皇后両陛下〔AFPBB News

 内外マスコミの論調は割れた。安保を重視するか、TPP(環太平洋戦略的経済連携協定)に焦点を当てるかで結論は異なる。

 最大公約数的な評価は、安倍晋三首相が安全保障面で望むものをほぼすべて得たのに対し、オバマ大統領にとってTPP・貿易交渉面での成果は必ずしも十分でなかった、といったところだろうか。

 筆者はこうした表面的な分析を好まない。現実がそれほど単純でないことぐらい分かっているからだ。

 そもそも米大統領の国賓訪日は日本にとって一大外交行事。最終プロダクトは安保、経済など様々な分野を包含する大きなパッケージディールとなる。準備だけでも最低数カ月かかる大仕事なのだ。

 だが、マスコミや評論家たちは黙っていられない。今回の日米首脳会談についても、勝者と敗者に関する議論が散見された。しかし、本当に成功した外交には勝者も敗者もない。実際に、安倍首相とオバマ大統領は勝者でも敗者でもなかった。この点はオバマ訪日の成果を考えるうえで極めて重要である。

中国に関するオバマ発言

 まずはオバマ大統領の実際の発言を検証してみよう。以下は4月24日の共同記者会見で同大統領が尖閣諸島と日米安保条約などについて述べた部分だ。微妙なニュアンスを理解していただくためにも、ここは英語を正文とし、筆者の責任で仮訳を付けさせていただいた。

- Our treaty commitment to Japan's security is absolute, and Article 5 covers all territories under Japan's administration, including the Senkaku Islands.(日本の安全保障に対する米国のコミットメントは絶対的であり、[日米安保条約]第5条は尖閣諸島を含む日本の施政権下にあるすべての領域を対象としている)

- We don't take a position on final sovereignty determinations with respect to Senkakus, but historically they have been administered by Japan and we do not believe that they should be subject to change unilaterally.(米国は尖閣諸島に関する最終的主権問題の決定に関する立場を取らないが、歴史的に尖閣諸島は日本の施政権下にあり、米国としてはこれを一方的に変更すべきではないと考える)

- This is not a new position, this is a consistent one. There's no shift in position. There's no "red line" that's been drawn. We're simply applying the treaty.(これは新たな立場ではなく、米国の立場は一貫している。米国の立場に変更はなく、これで「[武力行使を示唆するような]レッドライン」が引かれることはない。米国は単に条約を適用しているのである)

- At the same time, as I've said directly to the Prime Minister that it would be a profound mistake to continue to see escalation around this issue rather than dialogue and confidence-building measures between Japan and China. And we're going to do everything we can to encourage that diplomatically.(同時に、この問題を巡り日中間で、対話や信頼醸成措置ではなく、[緊張]のエスカレーションが続くことは重大な誤りであり、このことは安倍首相にも直接伝えている。米国はこうした動きを外交的に全力で慫慂=しょうよう=していく)