ドイツニュースダイジェスト 20 Marz 2014 Nr.974
近頃ニュースを賑わしているADAC。発音は、ドイツ語のアルファベットに合わせて「アーデーアーツェー」。今年発覚した自動車賞の不正操作スキャンダルで、その名前を耳にした人も多いだろう。
または、路上でロゴが大きくペイントされた黄色い車を見掛けた人もいるかもしれない。さて、そのADACとはいったいどのような組織なのだろうか?
多岐にわたるADACの業務
全ドイツ自動車クラブ(ADAC)は日本のJAFに当たるロードサービス組織で、現在の会員数は約1900万人。その業務内容は、ロードサービスを中心に、旅行保険業、旅行代理店業、自動車ローン、カーレンタル、書籍出版、長距離バスなど多岐にわたる。また、そのノウハウを活かし、テストマーケティングや市場調査の結果なども定期的に発表している。
ADACの歴史
ADACの前身となる組織は、自動車ではなくオートバイの組織で、1903年にシュトゥットガルトで設立された。当時の会費は6マルク、会員数は約3300人であった。
1911年には現在の名称Allgemeiner Deutscher Automobil-club e.V.(ADAC)に改名され、ドイツ全体のドライバーをサポートする組織となる。以降、オートバイや自動車のみならず、モーターボート、飛行機、飛行船など、モータリゼーションに対応したあらゆる乗り物を管轄するようになった。
ナチス・ドイツ時代、ADACはその管轄組織であるDas Nationalsozialistische Kraftfahrerkorps(NSKK)に吸収されたが、第2次世界大戦後の1946年にミュンヘンで再結成され、当時の連合国軍占領地域の西側(後のほぼ西独に当たる部分)を管轄とした。
1989年のベルリンの壁崩壊の際、ADACは東側にロードパトロール部隊を送り込み、統一によって東のADAC部隊をサポートする形で、東西のADACは統合した。この時点で、会員数は1000万人を超えた。
2004年には、会員投票を基に人気車を決める「Gelber Angel(=黄色い天使。ADACを象徴する色が黄色であるため)」が始まり、会員数は1500万人を超えた。
ADACの強み
ADACの強み、それは現在約1900万人に上る会員数とその収益力である。
長距離バス市場の自由化に伴い、2013年10月にはドイチェ・ポストと共同で長距離バス事業へ参入した。ドイチェ・ポストが持つ全国のインフラや車両管理のノウハウと、ADACが協力することで、鉄道、飛行機などに比べて安価な長距離輸送手段を提供。現在、ハンブルク―ミュンヘン間、ベルリン―ケルン間など、ドイツの大都市のほぼすべてを網羅したネットワークを構築している。
相次ぐスキャンダル
しかし、今年に入ってからADACのスキャンダルが次々と露呈している。1月17日には、前述の「Gelber Angel」の投票数を水増ししていたことが発覚。