足元の中国マクロ経済は安定している。物価は市場経済化が始まった1990年代前半以来、初めて2年以上にわたって2~3%で安定的に推移している。

 一方、雇用面を見ると、都市部の雇用は順調な拡大が続き、2013年の都市部の有効求人倍率は年間を通じて1.1程度で推移しており、適度な範囲内での労働力不足の状態である。

 このような労働需給の逼迫を背景に、最近上海市では最低賃金を4月以降、従来の1620元から1820元にまで12.3%引き上げると発表した。

経済成長率の低下にもかかわらず新規雇用は増大が続く

 2010年までは2ケタに達することも珍しくなかった経済成長率は、2012年以降8%を割り、概ね7%台後半で推移している。それにもかかわらず、都市部の新規雇用者数は毎年増加し続けている。

 経済成長率が10.4%に達した2010年に新規雇用者数は1168万人だった。その後成長率が2011年9.3%、2012年7.7%、2013年7.7%と低下してきているにもかかわらず、都市部の新規雇用者数は、2011年1221万人、2012年1266万人、2013年1310万人と年々増加し続けている(図表1)。

【図表1】都市部における雇用労働者新規増加数(資料 CEIC)

製造業とサービス産業のウエイトが逆転

 どうしてこのようなことが起きるのだろうか。その主因は産業構造の変化にある。

 中国政府はリーマン・ショック後の深刻な不況からの脱出のために、いわゆる「4兆元の緊急経済対策」を実施した。これはわずか1年間で中国経済を2ケタ成長に戻した点では成功だったが、副作用として鉄鋼、造船、セメント、ガラス、太陽光パネル等幅広い産業分野で過剰設備を生み出した。

 これをそのまま放置すれば不良債権問題がさらに深刻化する可能性が高かったことから、2011年以降、中国政府は過剰設備の削減を促進する政策を実施した。その結果、製造業=第2次産業を中心に、設備投資の抑制・廃棄が進み、投資の伸びが鈍化した。これが経済成長率の押し下げ要因となったのである。