壁に描かれた着物姿の日本女性「みゆこ」の前で、中年のスイス人男性たちが抹茶ラテを飲みながら談話している。

Les Gourmandises de Miyukoはチューリヒ中央駅の裏手、駅から徒歩数分。開店時間は、月~土:9時~18時、日:9時~17時。日本人観光客はまだまだ少ないそう。チューリヒを訪れたら、ちょっと寄ってみませんか?(©Manuel Vargas Lépiz)

 泳ぐ錦鯉のイラストが描かれた前では、若いスイス人女性2人がブランチメニューを楽しみながらおしゃべりに夢中になっている。そんな光景が当たり前のカフェが、チューリヒにある。

 「Les Gourmandises de Miyuko(みゆこのご馳走)」は、日本的な可愛らしさと、西洋的なメルヘンチックな雰囲気を併せ持つカフェ界のニュースターだ。略してカフェMiyukoと、みなが親しみを込めて呼んでいる。

 キュートな空間と、おいしいケーキとお茶とで、開店3年にして、スイスのレストラン・カフェ大賞「Best of Swiss Gastro」カフェ部門で、2014年、堂々の第2位に輝いた。つい最近は、店の紹介とレシピをまとめたお洒落な本も出版している。(文中敬称略)

日本的モチーフのケーキがずらり

 ピンク、オレンジ、グリーン、ブルー、パープルとパステルカラーの地に、桜の花や舞子が飾られたショートケーキが、ショーケースに並ぶ。見ているだけで気持ちがウキウキしてくる。

 カフェMiyukoのケーキは、フルーツやクリームのトッピングでフワフワといった感じというより、ハッキリとした線で描いた可愛いイラストを、そのままケーキにしたような独特の持ち味を醸し出している。

 誕生日、結婚式、企業のイベントにと、大型ケーキの注文も多い。それらもイラスト性の強いデザインだ。

 「お客様の希望に合うように、どんなデザインでも作ります。こういうふうにお願いしますと、ものすごくきちんとイメージを持って来る方もいますし、大体こんな感じであとはお任せしますという方もいます。デザインに限りがないことは、とてもやり甲斐を感じますね。

 例えば、ハードロックのファンでバイクが趣味というカップルからウエディングケーキの注文をいただいたときは、黒地にメラメラと燃え上がる大きな赤い炎を付けて、エレキギター2台、赤と黒の花、そして骨付きの白い大きなリボンで覆って、それぞれバイクに乗った新郎新婦を最上段に飾りました。こんなふうに、とてもウエディングケーキには見えないというケーキを、よく作ります」

和風以外のデザインも得意。(左)ハードロックとバイクが好きなカップルが注文(©Carolina Caruso) (中)歯車に金箔を散りばめて。男性向けにいいかも (右)バラの花をあしらったエレガントなケーキも(以下、特記以外すべて ©Sara Hochuli Les Gourmandises de Miyuko)