東芝のNAND型フラッシュメモリの技術情報が韓国 SK Hynix に漏洩し、2014年3月13日に警視庁が情報を流出させた容疑で日本人技術者を逮捕した。東芝は同日、その容疑者と SK Hynix を相手取り、1000億円の損害賠償を求める訴訟を東京地裁に起こした。また、東芝と業務提携しているSanDiskも14日、SK Hynix などに対して、損害賠償や製品販売差し止めを求める訴訟を米カリフォルニア州の裁判所に提起した。

 私は、TV、新聞、雑誌社などのメディアから、本事件に関するコメントを求められ、何社かには意見を述べた。その際、メディアは、日本の技術流出の実態として、『2010年度版、日本ものづくり白書』(経済産業省他編集、以下「白書」)に記載されているデータを参考に挙げていた。ところが、私はその白書のデータに大きな違和感を覚えた。

 そこで本稿では、まず、この白書のデータを示したうえで、どこに違和感を覚えたのかを述べる。さらに、平成24(2012)年度に、経済産業省の委託調査として行われた『人材を通じた技術流出に関する調査研究報告書(別冊)』(以下「報告書」)のデータを抜粋することにより、最近の人による技術流出の実態と、日本企業における問題点を明らかにしたい。

7~8割の拠点で技術流出なし?

 白書の国内外拠点における技術流出の状況を図1に示す。メディアの多くは、この図から、国内拠点および海外拠点で、それぞれ、18.2%および27%もの技術流出があったと報じていた。

図1 国内外拠点における技術流出の状況
出所:2010年度版ものづくり白書(図225-1)

 私は、この数字にも、メディアの報道姿勢にも大きな違和感を持った。それはどういうことか?