3月4日の参議院予算委員会で、共産党の小池晃議員が小松一郎内閣法制局長官に対して「憲法の番人なんだから、安倍政権の番犬みたいなことをしないで」と揶揄した。

 これに対し、翌5日、小松長官が社民党議員への答弁のなかで「このような指摘を受け入れることはできない」「(共産党は)日頃、国民の基本的人権をことさら重視している。プライバシーや名誉を含め、国家公務員にも憲法で基本的人権が保障されている」と反論したそうだ。

 新聞報道によれば、小池議員は「番犬と断定したわけではない」と弁解しているようだが、これは通用しない。「番犬」は犬なのだから、人間である法制局長官を「番犬」と断定しないのは当たり前のことなのである。普通に考えれば無礼千万な発言であり、小松長官が侮辱されたと思うのは当然である。

 小池議員の発言は参議院予算委員会の理事会でも問題にされ、共産党の大門実紀史議員が陳謝したという。「小池議員の発言は言い過ぎであった」というのが、参議院予算委員会理事会としての認識ということなのだろう。

 共産党という政党は、戦前も戦後も弾圧された歴史を持っている。今も公安調査庁の調査対象にされている。だから、ミスを突かれて叩かれることを極度に警戒するDNAを持っている。“過ぎたるは猶及ばざるが如し”なのである。意外に思われるかもしれないが共産党が「品」というものを気にする政党なのは、そうした歴史から来ている。私などは、腰に手を当てて質問しただけで不破哲三氏から叱責されたものである。

小池議員は党内で批判されたはず

 今回の小池議員の質問は、2つの点で党内から批判があってもおかしくないものだ。

 1つは、「番犬」という品位に欠ける発言だ。

 もう1つは、法制局長官を「憲法の番人」と呼んだことだ。違憲立法審査権を持つ最高裁判所を「憲法の番人」と呼ぶことはあるが、内閣の一部局に過ぎない法制局を「憲法の番人」などと呼ぶことはない。