朴槿恵(パク・クネ)政権はまだスタートして1年余りしか経っていないが、政界では早くも「次の大統領候補は誰か?」という関心が急速に盛り上がっている。というのも、6月4日の統一地方選挙が、その重要な第一歩となるからだ。

 「ソウルを世界でも指折りの競争力があり、住みやすい都市にするために努力したい」。2014年3月17日、ソウル市内のホテルで開かれた韓国の有名大学が主催する定例朝食会。ソウル市長選挙への立候補を表明している鄭夢準(チョン・モンジュン=62)国会議員がこう話した。筆者はこの朝食会に参加しているが、いつもより多い150人を超える経済人やメディア関係者などが月曜日の朝から詰め掛け、関心の高さをうかがわせた。

現代財閥創業家出身の大物議員、ソウル市長選与党候補に名乗り

 鄭夢準議員は日本でもおなじみの大物政治家だ。現代財閥の創業者である鄭周永(チョン・ジュヨン)氏の6男で、今も世界最大の造船会社である現代重工業のオーナーだ。7回当選の国会議員で、与党代表も歴任した。

 日本でもっと知られているのは、韓国サッカー協会の会長として2002年のサッカーワールドカップの日韓共同開催を実現させたことだ。この年には、大統領選挙にも名乗りを上げたが、最終盤になって盧武鉉(ノ・ムヒョン)氏との候補一本化に応じた。

 これほどの大物議員が、まさに「政治生命を懸けて」(韓国紙デスク)ソウル市長選挙に出馬する。

 鄭夢準氏は、現代財閥オーナー家出身で、サッカー協会でも活躍したことで圧倒的な知名度を誇る。さらに2008年には選挙区を「現代財閥の城下町」と言われる韓国南東部の蔚山(ウルサン)から、あえて激戦のソウルの選挙区に国替えしている。「ソウル選出の国会議員」として市長候補としての条件を十分に満たしているというのが陣営のセールスポイントの1つだ。

 だが、市長の座を射止めるために乗り越えなければならないハードルはあまりにも高い。

 まずは、与党セヌリ党の候補にならなければならない。投票まであと2カ月ちょっとだが、党の候補者選びはこれからなのだ。

「逆転さよならヒット」狙う強敵出現、与党内の「ビッグマッチ」に

 一足早く名乗りを上げて駆け回っている鄭夢準氏だが、3月14日に、強敵が出現した。米国スタンフォード大学で短期研究生活を送っていた金滉植(キム・ファンシク=65)前首相が立候補を宣言したのだ。

 この日、仁川国際空港に到着した同氏は、詰め掛けた記者たちに「野球で言えば、逆転さよならヒットを打つ」と語った。サッカー通の鄭夢準氏を意識して野球に例えて巻き返しの意欲を示したのだ。