マット安川 ゲストは初登場の経済産業省クールジャパン担当・諸永裕一さん。日本のクリエイティブ産業や海外でのカルチャーイベントの現状を伺い、これに懸ける「国を背負う思い」をお聞きしました。

日本にはいいものがたくさんある。企業の海外進出を支援

「マット安川のずばり勝負」ゲスト:諸永裕一(経産省クールジャパン担当)/前田せいめい撮影諸永 裕一(もろなが・ゆういち)氏
経済産業省・クリエイティブ産業課(撮影:前田せいめい、以下同)

諸永 経済産業省のクリエイティブ産業課は、「クールジャパン」として海外に出ていこうとする企業の方々を応援しています。最近の海外進出の動きとして特徴的なのは、いつか海外に出たいという夢や思いだけではなく、実際にいつ出ます、この国に出ます、というようなリアリティーを持った企業が増えていることです。

 例えば、イタリアのミラノの展示会などにも、東京の中小企業の方々が自分の作品を持っていき商売をやっていらっしゃる。またはラーメン屋さんがどんどん海外に出ていったり、範囲も大きく広がってきています。

 ただ、日本にはいいものがたくさんあり、それをそのまま伝えて成功するものもありますが、そのままではダメなことも少なくありません。

 例えば、鉄瓶です。フォルムがすごくかわいいので、パリのカフェで使いたいというお客さんがいたのですが、鉄瓶なので、お湯を沸かすと鉄分が出て、紅茶をいれると味や色が変わってしまい、ニーズを満たさないんです。

 そこでデザイナーの方が、中をホーロー引きにしてコーティングした。日本人からすると鉄のよさが半減してしまう感じですが、鉄分が出ないから紅茶の味も色も変わらない。そういうように現地のニーズに合わせ、使える形に工夫されたわけです。

 または、漆の器、食器です。欧米では普通、箸ではなくナイフとフォークを使いますから、器に傷がついたりします。そこで傷がつきにくい漆の加工技術を持った方の器が認められるようになっています。

 そういうものが徐々に広がってきているのですが、日本人にしてみれば当たり前だけれども、海外の人にとっては魅力的なものがまだまだいっぱいあります。日本人ですら知らない素晴らしいものが地方にはたくさんありますし、それを海外にどんどん発信していきたいですね。

 また、スプーンやフォークにしても、もともと西洋のものですが、新潟で作られたものがノーベル賞の晩餐会で使われたりしています。日本の魅力は「和」だけではないところに、日本人が気づくことも大事かもしれません。