2月、ホーチミンにベトナムのマクドナルド第1号店が開店した。
開店直後の一時的ブームの要素を考慮したとしても、その集客力は尋常ではない。開店から16日間での総来客数は25万人。単純計算で、1日当たり1万5000人強。1分当たり11人(ベトナムのマクドナルドは24時間営業)の客が文字通り殺到している。
ベトナムらしくバイクのドライブスルーがあり、そちらも長蛇の列。バイクに乗ったまま買い物を済ませるベトナム人の習慣にマッチしている。
メニューは、定番の「ビッグマック」が約300円、豚肉好きのベトナム人向け商品「マックポーク」は約180円だ。ホーチミンのオフィスワーカーの平均的な昼食代が150円から200円ぐらいであるから、ベトナム人にとってのマクドナルドはプチ贅沢的な位置付けになる。
1991年のインドネシア以来、実に23年ぶりとなる東南アジアへのマクドナルドの進出。このベトナムへのマクドナルド上陸を、(1)対米感情、(2)越僑、(3)ベトナムの産業構造の弱点、という3つの点から考察してみたい。
多くの負の遺産にもかかわらず、良好なベトナム人の対米感情
マクドナルドと言えば、アメリカ文化の象徴的な存在だ。ベトナム戦争終結(1975年)から40年近くたった今日、果たして、ベトナム人の対米感情はどうなのだろうか。
結論としては、ベトナム人は、アメリカが味方した南の人はもちろんのこと、北の人たちも、おしなべて米国好きである。
米越間の負の遺産は決して小さくはない。ベトナム戦争中のベトナム人犠牲者は、兵士が約100万人、民間人は約300万~500万人と言われる。一方、米兵の死者は約5万8000人、行方不明者は約2000人。ベトナム側はこれまで、行方不明米兵の身元確認と遺骨収集に協力しており、600体以上の米兵遺骨が回収されてきた。
また、戦争中に米軍兵士とベトナム人女性の間に生まれた子供(越語ではライ・ミーと呼ぶ)も、少なく見積もっても1万人いると言われている(公式統計はなし)。