2013年3月6日、クリミア議会は「クリミアをロシア連邦の法主体としてロシア連邦に編入する」ことを決議し、これを問うクリミア全土のリファレンダムを3月16日に実施する、と発表した。セヴァストーポリ市議会も同様の決定を下した。

 2013年11月21日から始まったウクライナの首都キエフにおける抗議集会は、ビクトル・ヤヌコヴィッチ政権の打倒を達成すると同時に、多くの問題を噴出させているが、その中でもこのクリミア分離は対ロシア関係と相まってウクライナの焦眉の急となっている。

無法国家ウクライナ

ロシア、自国艦沈ませウクライナ軍妨害か 黒海への海路ふさぐ

クリミア半島西岸にあるドヌズラフ湖の黒海に通じる出入り口部分に沈められたロシア艦艇。ウクライナ軍を妨害するためと見られている〔AFPBB News

 現在のウクライナは無法状態にあると言ってよい。キエフの抗議集会側を見れば、ウクライナ最高会議の大統領解任決議は憲法違反であるし、抗議集会側の自衛組織が市内の治安維持にあたる法的根拠も不明だ。

 こうした点をついて、ロシア政府やクリミア自治共和国はキエフの現政権を正統なものと認めていない。しかし、一方でクリミア議会による首相の解任・任命も、クリミア自治共和国憲法で規定されているウクライナ大統領の同意を得ていないため、こちらも違法である。

 また、クリミア議会が決議したクリミア域内限定のリファレンダム(住民投票)実施はいかなる設問であろうともウクライナ憲法違反である。ウクライナ憲法は全ウクライナのリファレンダム(国民投票)しか規定していないからだ。

 ロシア側は否定しているがウクライナ領へのロシア軍派遣や、「自衛団」のクリミア治安の掌握にも法的根拠がないのは言うまでもない。

 そもそも、他国にウクライナ領へ軍の派遣を依頼できるのはウクライナ最高会議のみであり、ウクライナ大統領、クリミア自治共和国側にはその権限がない。ウクライナ・ロシア間には、この種の安全保障条約が結ばれていないため、ロシア軍のウクライナ領土上へ展開にはいかなる法的根拠もない。

自治権拡大から分離・編入へ

  クリミアにおける分離主義の先鋭化は、歴史的背景が関係していることは言うまでもない。1954年にロシアからウクライナに管轄替えされたクリミアおよびセヴァストーポリ市は、ウクライナ意識が最も低く、ロシア語母語率、ロシア民族籍率が最も高い地域だ。

 彼らから見れば、独立以来、ウクライナの首都キエフの政権が採用するウクライナ語化政策とヨーロッパ統合政策は、実効性を伴ってこなかったとはいえ、不満の種であった。