ヒトパピローマウイルスワクチン(HPVワクチン)に対する接種の副作用が社会の関心を集めている。2009年にワクチン接種が開始されてから、注射部位の腫れや痛み・しびれ・関節痛を訴える報告が相次いだからだ。報告数の累計は956件にも上る。

 一連の副作用報告を重視した厚生労働省は、昨(2013)年6月に接種勧奨を中止し、時間をかけて副作用対策を議論してきた。1月20日、厚労省の検討会は一連の議論をまとめ、副作用の多くは「接種による痛みや不安に対する心身の反応が引き起こしたもの」と結論づけた。

医学的に確立しているワクチンの有効性

 これを受けて、厚労省は接種勧奨を再開する予定だと言う。果たして、このまま接種勧奨を再開してもいいのだろうか。私は、もう少し議論が必要だと思う。

 まず、HPVワクチンの有効性について説明したい。世間では、様々な意見があるようだが、このワクチンの有効性は、ほぼ医学的に確立していると言っていい。

 HPVは子宮頸癌の原因だ。HPVは性交渉により感染するため、我が国では20代から30代の女性を中心に毎年1万5000人が罹患する。現在、我が国では、グラクソ・スミスクライン社の「サーバリックス」と、MSD社の「ガーダシル」の2種類のHPVワクチンが承認されている。

 英国で実施されたPATRICIA試験では、健康な15歳から25歳の女性1万6162人を2群に分け、AS04アジュバンドを含むHPVワクチンとアルミニウムアジュバントを含むA型肝炎ワクチン(対照群)を接種したところ、34.9カ月の間に子宮頸癌を発症したのは、HPVワクチン接種群で1人、対照群で53人だった。実に、子宮頸癌のリスクを98.1%減らしたことになる(1)。

 HPVワクチンの問題点は2つある。1つは費用だ。通常、HPVワクチンは3回接種しなければならず、自己負担の場合、総額4万5000円前後もかかる。HPVワクチンが、2013年から予防接種法に基づく定期接種となり、小学校6年生から高校1年生の女子は全額公費で接種できるようになったことは、国民にとってありがたい話だ。

 これ以降、接種者は急増し、日本におけるHPVワクチン接種率は2012年で約67%、販売開始から2013年3月末までの接種者数は258万人に上る。

 実は、私もHPVワクチンを接種した。ワクチン接種が始まってすぐ、子宮筋腫に苦しんだ母に、接種すれば子宮頸癌にならずにすむと説得されたからだ。同じ頃、大学の友人も、徐々に接種するようになった。

 HPVワクチンを打った時、痛みが強かった記憶がある。痛みは、体に様々な悪影響を及ぼす。予防接種に限らず、注射や採血の際の痛みが迷走神経を刺激して、失神する人がいる。