欧州ではデフレ懸念が深刻化している一方、1月31日に発行されたユーロスタット(欧州連合=EU=統計局)の報告書によると、失業率はユーロ圏17カ国で過去最高のまま、他の欧州国も高率にとどまっている。
最近のメディア上の経済記事では「欧州は2008年からの経済危機から脱した」という向きもあるようだが、一部統計や生活実感からは、危機から脱したとは到底言えないようだ。
失業の増大と収入の減少による消費支出縮小の影響により、物価上昇率は低下し続けている。1月のインフレ率は0.7%と過去最低を記録し、欧州中央銀行(ECB)が設定した2%弱というインフレ目標を大きく下回っている。
2月2日付フィナンシャル・タイムズ紙の「『危機が終わった』との見方も、もはやこれまでだ」という書き出しで始まる記事は、欧州のデフレ危機を予測し、こう書いている*1。
「多くの新興経済国が危機を深化させていることは、最近のトルコやアルゼンチンの通貨の価値急落で表された。危機の深化は、完全なデフレ、すなわち、実質価格の下落に欧州を導く可能性がある」「デフレ突入寸前の国にとって、隣国の通貨危機ほど起こってほしくないものはない。そして、これはギリシャとキプロスだけではなく、ユーロ圏全体の問題だ」
昨年12月のユーロ圏の失業率は12%と、過去最高を記録し推移している。国別ではギリシャ27.8%、スペイン25.8%と、緊縮財政プログラムの対象となっている国で最も高い。1年間の上昇率が最も高い国は、キプロス(17.5%)、ギリシャ(27.8%)、オランダ(7.0%)、イタリア(12.7%)である。
ユーロ圏の失業者数は公式統計よりずっと多い?
だが、ブルームバーグ・ニュースのリポートは、このユーロスタットの数値は失業者数を大幅に過小評価したものだとしている*2。
ユーロスタットの失業率は、前の4週間に積極的に仕事を求めていて、次の2週間以内に就業を開始することが可能である人だけがカウントされており、昨年第3四半期の失業者数を1900万人としている。ブルームバーグは、ユーロスタットの数字に加えて職探しをあきらめたり仕事にすぐに就業できない人も含めた失業者数を、3120万人と算定している。
欧州の雇用危機に関して、世界の政財界エリートの経済会議であるダボス会議中にインタビューを受けたアンヘル・グリア経済協力開発機構(OECD)事務局長は、こう言った。
「問題は、ジョブ、ジョブ、ジョブだ。若い世代は非常にイライラし、政治的に爆発寸前で、危険な不安定要因が蔓延している」
*1=http://www.ft.com/intl/cms/s/0/58bfa7ec-89e9-11e3-abc4-00144feab7de.html#axzz2tIviQfkZ