カンボジアの第1回大学対抗ロボットコンテスト(以下、ロボコン)の開催予定日は3月29日。しかし、参加学生たちが使用するパーツが到着する気配が全くない。

 もう別の手立てを考えないと間に合わないということで、ロボコン開催のためにいろいろ力を貸してくれているタイのテレビ局MCOTに協力を仰ぎ、タイでパーツを調達しようと考えた。

 しかし、どうもタイは日本よりも遠いようだ。というのは、昨年から始まったタイの反政府デモは、総選挙に向けてますます激化。そのため、私が所属するJICAでは、既に治安上の理由で公務による出張は見送りとなっていたが、遂に私費渡航も禁止となってしまったのだ。

日程延期か決行か、緊急会議も行き詰まる

 私費渡航の禁止が出るまさにその前日、私はMCOTのジョッキーさんに、SOSのメールを送っていた。「日本から参加者用のパーツが届かない。タイで調達できないか」と。

 そしてその翌日の午後、一緒にロボコンの運営をしている德田さんと平松さん、国営テレビ局の副局長でロボコンのチーフプロデューサーである”松平の殿様”、そして運営委員会で各大学を束ね、我々との橋渡し役をしてくれている日本語通訳であり事業家でもあるカンボジア人、サムナンさんが集まり、細かいコンテストまでの段取りを確認する会議を開く予定になっていた。

 しかし、図らずも、これが緊急会議になってしまったのである。

 この会議に先立ち、私は、平松さんと德田さんに、このままパーツの遅延が続いた場合、参加できるのかどうかを大学側に内々に打診してほしいとお願いしていた。

 ところが、平松さんはこう言ったのだ。

 「労働訓練省傘下のPPI(プレアコソマ総合工科専門学校)、NTTI(国立技術訓練専門学校)、NPIC(カンボジア国立工科専門学校)の3校は、3月末から4月にかけて試験がある。その試験勉強と学校側の準備は通常1カ月前から行われるため、パーツの到着が遅れたら、ロボット制作の指導をこれ以上続けるわけにはいかない。

 このままだと開催予定の3月29日には参加できないと言っている。先生たちは試験の準備があるから、タイでパーツが調達できたとしても取りに行っている暇はないと言っている」