2月7日、ロシアのソチで冬季オリンピックが開幕した。開会式が始まったその時、筆者はモスクワ市内のレストランで友人と夕食を取っていた。金曜の夜でいつもなら満席のはずのレストランが客の入りは半分以下だった。
またレストランの入り口で「オリンピック開会式のテレビ中継あるか」と聞いて「ない」と言われて引き返すロシア人客もいた。 始まるまではオリンピックには興味がないふりをしていたモスクワ人も、実のところはそれなりの関心を持っていると思われる (もともとスポーツ好きの国民である)。
開会式の成功でロシア人が自信深める
実際、ここ数日のミーティングでは、「開会式見たか?」「演出はどう思う?」という挨拶から始まることが多かった。開会式の成功がロシア人の自信を喚起したことは間違いないようである。
開幕直前まで雪不足や工事の遅れ、テロの危険性が喧伝され開催を危ぶむ声もあったが、少なくとも執筆時点(12日)においては競技は順調に進んでいる。
さて、オリンピックのような大きなイベントがあるとロシアに関する報道が一気に増え、普段は馴染みのないロシアが急に身近に思えたりするわけだが、すると気になるのがロシアに関する思い込み報道の多さである。
例えば、ソチ・オリンピックの開幕を伝える7日の日本の通信社は次のような記事を配信していた。
【ソチXX】第22回冬季五輪ソチ大会が7日開幕した。ロシアでの五輪は旧ソ連時代の1980年モスクワ夏季大会以来で、冬季大会は初開催。史上最多の87カ国・地域から約2900人が参加する。
(中略)ロシア南部の黒海沿岸に位置するソチは、温暖な気候で古くから人気の高い保養地。昨年末からは近隣都市で自爆テロが続発し、安全面の脅威にさらされたが、厳重な警備で影響を抑えている。
これを読んで筆者が違和感を感じるのは「昨年末からは“近隣都市”で自爆テロが・・・」のくだりである。 この近隣都市とは昨年12月に2件の自爆テロが起きたボルゴグラードのことを指すのは明らかである。
しかし、ソチとボルゴグラードは直線距離で680キロ、東京から広島とほぼ同じ距離である。それが近隣なのかどうかは主観の問題かもしれないが、東京と広島が近隣都市だと認識する人は日本にはいまい。