ロシア南部のリゾート地ソチで開催される冬季オリンピックがいよいよ目前に迫った。

 ウラジーミル・プーチン大統領が自らグアテマラにおける2007年のIOC(国際オリンピック委員会)総会に乗り込んで招致に成功したオリンピックであり、また大統領職に返り咲いた後の重要な国際的祝祭の1つでもあるので、その成功を世界に華々しく示したいということからこのオリンピックを「プーチンのゲーム(Putin's Games)」と呼ぶ向きもある。

けちのつき始めは聖火の再点火

ソチ五輪聖火、リレー中に4度消える 当局は説明に追われる

既に4回は消えたソチ・オリンピックの聖火〔AFPBB News

 世界中のトップアスリートたちが繰り広げるオリンピック競技の熱戦は楽しみだが、その舞台裏ではかなりきな臭い雰囲気も漂っている。

 けちのつき始めは聖火ランナーが観衆からライターを借りて再点火した模様がニュース映像でも流れたことであろう。ギリシャ・オリンポスの丘で点火された聖なる火だからこそ、全国津々浦々を巡る価値があるのではなかったか。

 さらに世界を震撼させたのは、昨(2013)年末ソチに比較的近いボルゴグラードにおいて2度にわたる連続テロが発生したことだ。首謀者とされるテロリストらはソチ・オリンピックをテロの攻撃目標とするとすら宣言している。

 ロシア政府の意気込みとは裏腹に、世界中で「本当にソチ・オリンピックは大丈夫だろうか」と見る人が多いのが実際となっている。オリンピック準備に関する不備の責任のすべてがプーチンにあるとは言えないが、彼が築いた「体制」がその原因の1つであることは間違いないであろう。

 少し振り返ると、ロシアは一昨年の2012年にウラジオストクにおけるAPEC(アジア太平洋経済協力会議)首脳会議のホストとなった。バラク・オバマ米大統領が参加しないなど米ロ対立の一端が垣間見られた会議であったが、プーチンはこのウラジオストク会議の準備を通じて極東地方の振興を図りたい思惑があった。

 ウラジオストクのインフラ整備の突貫工事は、本誌JBPressでも紹介されたところだ。昨2013年はサンクトペテルブルクにおいてG20会議の議長国にもなった。G20本来のアジェンダである経済イシューの議論をそっちのけでシリア問題に焦点が当てられたことは記憶に新しい。

 そして本年のソチ冬季五輪が終了すると、今度は2018年にモスクワなどロシア各地でサッカーのワールドカップが待っている。ロシアにとっては立て続けに国際的なイベントのホストになるわけだ。

 これらの国際イベントにおけるプーチン大統領の意図は、まずはロシアの威信回復という対外的な側面であろう。特にオリンピックに関しては、日本をはじめ西側諸国がソ連のアフガニスタン侵攻を理由にボイコットした1980年のモスクワ・オリンピックの不完全さを仕切り直すという意味がある。