2014年1月、北京市政府が地元の有力日刊紙である「新京報」を買収したことが明らかになった。発行部数は公称77万部、市民目線の独自報道が強みだった。この買収は習近平政権による言論引き締め策の一環と見られている。

 今、多くの中国人が懸念するのが“言論引き締め策”だ。2013年夏以降、中国ではブログが当局に閉鎖される事例が相次いでいる。

高まる政権への不信感

 ベンチャー投資家で、人気ブロガーの中国系米国人、薛必群もその1人。警察に拘束された容疑は売春だが、人気ブロガーの影響力を抑え込もうという当局の思惑があったことは想像に難くない。

 薛必群のハンドルネームは「薛蛮子」。ネット上では「大V」の1人とされた。「大V」のVは“VIP”のVでもあり「重要人物」を意味する。近年は「微博」と言わるブログが流行しているが、中国では「大V」と呼ばれる複数のブロガーが発信力を強めていた。

 その1人が薛必群である。2011年から彼のブログの読者はうなぎのぼりに増える。2011年上半期は数十万人に、その後、100万人、1000万人と増え、読者数は1200万人と言われるようになった。ざっくり言えば中国の100人に1人が読んでいる計算である。

 テレビや雑誌などへの露出も増え、彼は瞬く間に国民的オピニオンリーダーとなった。彼の発信するトピックスは経済やビジネス、時事問題にとどまらず、環境や食品問題と広範囲にわたった。事件や問題の真相暴露や皮肉交じりの体制批判は、社会に不満を持つ多くの読者の溜飲を下げた。

 しかし、そのオピニオンリーダーの影響力も長くは続かなかった。上述のように売春のかどで逮捕されたのだ。売春容疑は薛必群の人格を汚し、信用力を落とすためには格好のものだ。また、最後に国営放送で「私が悪かった」と罪を認めさせるやり方は、共産党の常套手段でもある。