2013年末、台北で台湾の安全保障問題の専門家たちと意見交換する機会があった。
冬の台北は、亜熱帯とはいえ天気が悪いと思いのほか冷え込む。冷房はあっても暖房はないのが普通だから、意見交換をした研究機関の会議室は、暖房の利いた東京のオフィスと比べやはり寒かった。
意見交換で取り上げられたテーマは、台湾の防衛政策、中国の防空識別圏(ADIZ)設定から安倍政権の防衛政策まで多岐にわたったが、多くのイシューで日本側研究者と台湾側研究者との認識に大きなズレは見られなかった。
ところが、筆者が米中のいわゆる「新型大国関係」について、「これが米中双方の“核心的利益”を相互に尊重するものであるとすれば、米国と台湾との関係にも大きく影響するだろうし、尖閣問題を抱える日本にとっても影響は避けられないと思うが」と問いかけたところ、意外な答えが返ってきた。
「新型大国関係」構築の呼びかけは中国版「G2論」
台湾側研究者によれば、中国の提唱する米国との「新型大国関係」は外交プロパガンダに過ぎないという。米中の協調は、それをやろうとしても行き詰まる運命にあって、それは中国が「核心的利益」の適用範囲を広げすぎたからであり、今後米中の利害の衝突は避けられない、というものであった。
この答えに、率直に言って筆者は面食らった。米中「新型大国関係」はいずれにしてもうまくいくはずがない、と一刀両断したからである。そこまで達観できるのが羨ましくもあった。
しかし、本当にそう達観していいものなのだろうか。