1月7日の朝、ベルリンでの話。安売りスーパーの大手「アルディ」の従業員がバナナの箱を開けたら、なんとびっくり、コカインがザクザクと出てきた。バナナはコロンビア産で、船でハンブルクに着いて、ベルリンの青果市場に運ばれた。そして、そこから安売りスーパー「アルディ」へ。
バナナの箱から出てきた大量のコカイン
発見されたコカインの量は140キロ。ベルリンで一度にこれほど大量に発見されたのは、1990年の末以来だという。闇市での値段に換算すると、600万ユーロ(8億円以上)になるそうだ。
このコカインがどこへ行くはずだったのかは不明だが、ベルリンへ来たことがそもそも間違いだったのだろうというのが、麻薬捜査官の推測。
密輸グループのロジスティック担当者が何か重大なへまをやったに違いない。あるいは、すでに南アメリカで、間違ったコンテナに積まれてしまった可能性もある。それとも、港かどこかで麻薬を引き取るはずだった人間が、うっかり本物のバナナの箱の方を持っていったとか。
いずれにしても、今頃、どこかで大騒ぎになっているはずだ。1人や2人、すでに頭をぶち抜かれているかもしれない。
天然の麻薬の中には、大きく分けてケシから作られるものと、大麻から作られるものがある。ケシの実からは、アヘン、モルヒネ、ヘロインなど強い麻薬、大麻の花冠や葉っぱからはマリファナ、ハシシ、カナビスなどソフトな麻薬ができる。
コカインの原料はそのどちらでもなく、南アメリカ原産のコカの木の葉っぱだ。これは強い麻薬。そして、その他に、エクスタシーなど合成の覚せい剤も出回っている。日本でシャブ、エス、スピードなどと呼ばれているものだ。
麻薬の歴史は長い。マルコ・ポーロの『東方見聞録』に、ペルシャだかインドだかの嶮山に住む「山の老人」が、大麻を使って暗殺部隊を運営していたという話が出てくる。
優秀で、武術に優れた若者たちを集めては、大麻に酔わせ、天国を味わわせた後、「もう一度天国に行かせてやるから、使命を果たせ」と、危険な仕事に送り出した。若者たちは、どんな危険にも怖気づくことがなかったという。
麻薬の覚せい作用は、士気向上、疲労回復に効果を発揮する。ボリビアの鉱山の労働者は、コカの葉を噛みながら、空腹も疲労も忘れて重労働に従事する。第2次世界大戦中には、連合国側も枢軸国側も、危険な任務に就く兵士に覚せい剤を与えたという噂もあるぐらいだから、「山の老人」もあり得ない話ではないかもしれない。