さて、今週は何を書こうかと考え始めた矢先、「安倍首相、靖国神社参拝へ」なるニュース速報が飛び込んできた。それから24時間余、内外の新聞・テレビなどマスコミからの取材が続いた。香港の日刊紙など一部については物理的理由でお断りせざるを得なかったほどだ。というわけで、今週のテーマは「靖国」である。

なぜ12月26日なのか

安倍首相の靖国参拝、米国は「心から失望」 分析

靖国神社に参拝した安倍晋三首相〔AFPBB News

 たった24時間で久しぶりに夥(おびただ)しい量の質問を受けた。これらは概ね以下の通りに大別できる。人々が感じること、考えることは基本的に同じなのだと痛感した。

 ここでは読者の皆様のために、多くの記者から受けた典型的質問とそれに対する筆者の回答【と本音】を再録しておきたい。

●12月26日に参拝することはあらかじめ知っていたか?

 知らなかった。【知っているわけがないだろう。報道によれば、首相周辺の関係者ですら、参拝について知らされたのは直前だというではないか。そもそも、現在筆者は安倍政権の人間ではない。そんな話を筆者ごときが事前に知っていたはずがないだろう】

●なぜ、参拝は12月26日なのか?

 正確な理由は知らない。本人に聞いてほしい。この日が第2次安倍政権1周年であることは知っていた。1年の区切りが理由なのかもしれない。同時に考えられるのは、停滞する日中関係、日韓関係との関連の可能性だ。そもそも、これら問題の発端は安倍首相が作り出したものではない。

 日韓関係の悪化は韓国前大統領の竹島上陸が原因であり、尖閣問題も民主党政権時代からの引き継ぎ事項だ。こうした負の遺産を継承しながらも、安倍政権はそれなりの対中、対韓配慮を払い、可能な限り様々な前向きのシグナルを発信してきたと承知している。

 それにもかかわらず、過去1年間、中国から真剣な「取引」のシグナルはなかった。韓国についても関係改善の努力が水面下から浮上する兆候は見られなかった。今回の靖国神社参拝に、このような不幸な背景があった可能性は否定できない。

 【安倍首相は「英霊に対する哀悼の誠」に関する信念を曲げないが、同時に国益のための「取引」には極めてプラグマティックで柔軟な政治家だ。2006年の中国との「戦略的互恵関係」などはその典型例だろう。今回中国は、7年前とは異なり、1年経っても「取引」の準備はなかった。この点は韓国も同様である】