ベトナムのハノイに来ている(12月13日記)。街にはイナゴの大群のような、あの無数のバイクが群れて行く。ベトナムにしては、それなりに寒い冬の季節に入ったところだが、人々は陽気そのものだ。南国はよいところだ。厳冬の北京を経てハノイに来てみると、素直にそう感じる。

 それは筆者の気分だけではない。なにしろ、日越関係は絶好調なのだ。その証拠には、この12月10日の夜に在ベトナム日本大使館主催で行われた天皇陛下誕生日レセプションでは、ホテルの会場を埋め尽くさんばかりの人だかりだった。ベトナム側の主賓として、ベトナム共産党の政治局員でもある副首相が壇上に登っていた。

 こうした日越関係の最も大きな部分には、ベトナムへの日本からの投資の拡大がある。ベトナムへの日本企業の投資額は、2年連続で1位になる様相だ。

 一方、レセプション会場には、多くのベトナムの軍関係者の緑の軍服も目立っていた。ベトナムの軍人たちも、熱い視線を日本に送っている。なぜなら、11月23日に中国によって突然発表された東シナ海における防空識別圏は、ここハノイでもずいぶん注目を集めているからだ。

「日本とベトナムは事実上の同盟国」

 今回、筆者がハノイに来た1つの大きな理由は、最近の中国をめぐる地域の情勢についてベトナムの有識者と意見交換をするためである。早速、強い関心を示されたのが、中国による防空識別圏の話であった。筆者の持てる限りの知見をベトナム人知識人と共有することとなった。

 そのせいかどうかは分からないけれども、一昨日などは、ベトナムの中国専門家の1人から、「中国の台頭を前に、日本とベトナムはもはや事実上の同盟国である」と言われることとなった。

 さらには、別の東南アジア研究の年配の専門家からは、「今の状況は日本にとっての大きなチャンスなのだから、我々とともに大きく前に出なさい」と諭されてしまった。共産党に属すると思われる人々から「同盟国」と言われるのも、よく考えると不思議な話である。しかし、それほどまでに、東シナ海と南シナ海に関して日本とベトナムの重なる問題意識が、両国を急速に近づけてきているということなのだろう。