台風30号(ハイエン、フィリピン名ヨランダ)がフィリピン中部を直撃してから1カ月あまりが経過した。多くの読者も、ネットや新聞、テレビなどを通じ、この台風で多数の人が犠牲になり、多くの住宅やインフラが壊滅的な被害を受けたことに衝撃を受けただろう。
こうした中、各国政府や国際機関、NGOなどが支援活動を展開し、被災地の状況やニーズが少しずつ明らかになってきている。被災地は今、どうなっているのか。現地の動きを追ってみたい。
定期船のない離島が取り残される
「今回、フィリピン中部を襲った台風の被害は、ハイチ地震や東日本大震災における東北の津波被害に匹敵する」
フィリピンの状況をこう説明するのは、国際NGO「AAR Japan(難民を助ける会)」の五十嵐豪さんだ。五十嵐さんは AAR Japan の緊急支援チームの一員として、11月14日から12月7日までフィリピン中部の被災地で支援活動を行っていた。
今回、AAR Japan は特に、支援が届いていないセブ島北部の離島などの支援活動を行っているという。
というのも、日本では、レイテ島などの被害が中心的に伝えられているものの、セブ島も被害を受けており、特に離島はまだまだ支援の手が届いていない状況があるからだ。
こうした離島は定期船がないことも多く、移動手段が漁船以外にない場合も少なくないなど、孤立しがちだ。実際に、五十嵐さんは漁船を使って支援対象の離島まで渡った。
ただし、離島といっても数千人規模の人口があるケースもあり、支援を必要としている人は多い。そのため、AAR Japan は引き続き、こうした定期船のないような島嶼部で、現地の協力団体と連携し、緊急物資を配付するなどしていくという。
障がい者の現状把握と支援を進める AAR Japan
さらに AAR Japan が力を入れているのは、障がい者の支援活動だ。以前から被災地における障がい者支援に注力してきた AAR Japan だが、その大きな理由は、災害時に障がい者が極めて不利な状況に陥りやすいことにある。
被災地では、食料をはじめとする緊急物資をすべての世帯に個別配布することは難しいため、どこかに集合場所を設定して各世帯の人にそこまで物資を取りに来てもらうことで、物資を配布するケースが多いという。
一方、障がい者の場合、その世帯に健常者がいなければ、集合場所まで物資を取りに行くことが難しくなる。結果的に、食料など生活に欠かせない物資を確保できなくなってしまうのだ。
また災害によって車椅子や杖といった障がい者の生活に欠かせない道具や器具が破損したり、流されたりするケースもある。