「EUでは、あれほどたくさんの国が同じお金を使っているのに、偽札は出ないのですか?」という質問を、最近受けた。
そういえば、ドイツのスーパーでは、50ユーロ札(現レートで7000円弱)を出すと、小さな機械で光を当てたり、あるいは、透明のペンのような物でお札をなぞったりして、本物かどうかを調べているところは多い。
自動販売機などに、偽のコインが入っているという話もよく聞く。しかし、被害が局地的なためか、偽ユーロ札が大きなニュースになった記憶はない。
おもちゃ屋の「贅沢銀行券」が出回る日本、はなから疑ってかかる中国
一方、先月、盛岡市のイオンで、食料品店のレジから「百万円」と書かれた偽札が見つかったというニュースを見た。おもちゃや雑貨を扱う別の店舗で販売している“商品”だそうで、ちらっと見ると1万円札風。日本銀行券の代わりに贅沢銀行券などと書いてあり、福沢諭吉がにっこり笑っている。
しかも、裏が真っ白だったそうなので、本気の犯罪とは思えない。誰かがふざけてやってみた? 日本人は性善説で生きているので、もちろん偽札に対する警戒心も低い。だから、店の人は気づかなかった。笑える話だ。
偽札に重々気を付けなくてはいけないのは、中国だそうだ。宮崎正弘氏の話によると、流通しているお金の2割は偽札だとか。そういえば、汚れ過ぎとか、きれい過ぎなど、怪しいお札は受け取りを拒否されるという話は、他の人からもときどき聞く。
もし、怪しいお金を受け取ってしまうと、警察に持って行ってもお金が返ってくるわけではないので、夜のタクシーなど、見えにくいところで使ってしまおうと皆が考える。だから、タクシーの運転手は、受け取ったお札を灯りにかざして、しげしげと眺めるそうだ。ババ抜きを思い出す。
近年の有名な偽札の話は、スーパーノートだ。超精密な100ドル紙幣で、ほとんど本物と見分けがつかない。1994年あたりから頻繁に発見され、アメリカのCIAが北朝鮮の仕業と決めつけた。
ただ、オリジナルが印刷されているのと同じ印刷機が使われていることが判明したり、紙の質が最高であったりと、北朝鮮に本当にこのような凄い技術があるのかと、疑う声は高い。
その代わりに囁かれているのは、CIAの自作自演説だ。冷戦が終わって、CIAのスパイ活動の秘密予算が取りにくくなり、さらに、議会の監視も強まったため、資金不足を解消するために、自ら偽ドルを造っているという説だ。
CIA元職員、スノーデンのお蔭で浮上してきた情報などを見ると、CIAの自作自演説のほうも、かなり信ぴょう性が高いように思える。いずれにしても、これまでのスーパーノートの回収分が4900万ドル(約57億円)相当にのぼるというから、犯人にしてみれば良い商売だ。