カンボジアで「ロボコン」をやることになった。
というか、やろうと思っている。言い出したのは、私のカウンターパートであるカンボジア国営テレビ局の副局長パン・ナッ氏、通称、松平の殿様。そしてやろうと同意したのは私である。
なぜ松平の殿様なのかというと、この方、その昔、このテレビ局の「看板アナウンサー」だったそうで、日本で言うとNHKの松平定知さんのような存在だと、前任者から紹介を受けたからである。というわけで、私はこの人を「殿様」と密かに呼んでいる。
日本発のロボコンがアジア地域に広まった理由
では、なぜ殿様は突然「ロボコンをやりたい」などと私に言ったのかというと、この国営テレビ局は、アジア太平洋放送連合(ABU)に所属しているのである。
ABUというのは、西はトルコ、東はサモア、そして北はロシアから南はニュージーランドまでのアジア太平洋の63の国と地域から255以上の放送事業者が参加している組織だ(ABU公式ウェブサイトより)。ちなみに、日本からはNHKとTBSが加盟している。
そしてこのABUでは、番組ソフトをアジア地域で共有して、それを地域全体に発展させていこうという活動があるのだ。その老舗的な存在が、ABUロボコンなのですね。
そもそもNHKで始まったロボコンの放送が、ABUによってアジア地域のロボコンとして各国の参加を得て始まったのが、今から11年前の2002年のこと。
当初は日本が圧倒的に強かったけれど、タイ、ベトナムなどの新興国や、中国、インドがその国力とともに台頭して、毎年びっくりするようなロボットが登場し、そのテクニックや発想のユニークさを競っているのだ。
そして今や、ASEAN加盟国で参加したことがない国は、ミャンマーとここカンボジアだけになってしまったのである。
で、殿様は、このABUの会議に参加するたびに、ロボコンの映像やら、ワークショップやらを見せられて、ずっと「いいなあ」「参加したいなあ」と思っていたらしいのだ。つまり、ABUに所属しているテレビ局が主催なり、独占的に放送していないと、このABUのロボコンには代表を出せないのである。
だから、先週書いたように、まともな時計が一個もなくて、時間通りに番組が始まらない、そしていつどんな番組をやっているのか誰も知らない、このビンボーテレビ局でも、日本や中国や韓国の代表と同じ舞台にカンボジアの代表を送り込めるチャンスがある、というわけだ。
「今でしょ!」とプロデューサーの勘で思ったものの・・・
殿様から相談を受けた時に、「今ならやれるかな?」と私は思った。
カンボジアはこのところ外資がどんどん入って経済も右肩上がりだし、周辺国の労働者の賃金が上がって、次から次へと工場がカンボジアにシフトしてきている。プノンペンの街は高層建築の建設ラッシュだし、大規模な商業地域の開発も数カ所で同時進行中だ。