特定秘密保護法案をめぐって、メディアが張り切っている。特に常軌を逸しているのは朝日新聞で、12月3日の39面では「異議あり 特定秘密保護法案ワイド」と題して、1ページ全部を使って法案反対派の意見だけを載せている。政治的中立もかなぐり捨てて、法案をつぶそうというわけだ。

 今まで、この種の「スパイ防止法」は何度も国会に出されたが、メディアの反対でつぶされてきた。それは今回のように「国家権力が報道の自由を圧殺する」というキャンペーンだったが、日本のメディアは権力と闘ってきたのだろうか。

家賃も電気代も役所に払わせて「権力と闘う」?

 記者クラブは、世界にも類を見ない奇習である。クラブは役所の中に部屋を借りて家賃も払わず、各社の記者が机をもらい、電気代も電話代も役所が払っている。ホワイトハウスにもプレスクラブはあるが、これは記者会見のときだけ集まる場所だ。朝から晩まで張り付いて、みんなで飯を食ったり麻雀したりする記者クラブは日本にしかない。

 その最大の目的は、情報カルテルである。横並びで仕事をしている記者は、大事な情報を「抜かれる」ことを恐れるので、役所の情報は各社が同時にもらうのだ。正式の記者会見だけでなく、「記者レク」と呼ばれる非公式の懇談会が大事で、ここで聞いた話はオフレコ(記事にしない)である。

 メディアが特定秘密保護法に反対するのは、こういう特権がなくなることを恐れているからだ。官僚が今までレクで教えてくれた情報を「守秘義務がある」といって教えてくれなくなると、正式発表まで書けなくなる。

 しかしレクで話すのは、役所にとって都合のいい情報である。書いたら役所が困るような本物のスクープは、記者クラブでは絶対に出てこない。役所が家賃や電気代を出すのは、彼らの利益になることを書かせるための賄賂の一種なのだ。

田中角栄が生んだ「テレビ朝日」

 特に声の大きい朝日新聞は、「左翼が書いて右翼が経営する」と言われるほど、本音と建前の落差が大きい。その系列局のテレビ朝日も反対派の急先鋒だが、テレビ初期には存在しない局だった。