「問うに落ちず 語るに落ちる」という。「人に聞かれたときは用心をして秘密を洩らさないが、自分から語るときはつい口をすべらして白状してしまう」という意味だが、徳洲会病院徳田虎雄氏からの5000万円の資金提供をめぐる猪瀬直樹氏の弁明を見ていると、「問うにも落ちる 語るに落ちる」という様相だ。

挨拶に行かなければ資金提供はなかったはず

 猪瀬氏が日本最大の医療グループ「徳洲会」の徳田虎雄理事長(当時)を訪れたのは、2012年11月6日のことだった。猪瀬氏も認めているように、「都知事選挙に出馬することになりました。応援をお願いします」というのが、その趣旨であった。

 では「応援」というのは、どういうことか。考えられることは2つだ。1つは、投票での支援だ。徳洲会グループのホームページには、次のように書かれている。

 「徳洲会グループは現在、北海道から沖縄県まで66病院を含む280余の医療施設を展開。さらに今後は、大規模な医療施設だけでなく、地域に密着した診療所の充実や、高齢化社会を見据えた介護施設や社会福祉施設の開設を推し進め、引き続き全国各地の医療不足地域、離島僻地に至るまで、医療・介護・福祉関連施設を拡充させていきたいと考えております」

 280余もの医療施設を持っているが、調べてみると東京都内は少ない。昭島市にある東京西徳洲会病院と西東京市にある武蔵野徳洲苑の2カ所だけである。大きな病院のようだが都知事選挙の規模から考えれば、有権者数はたいしたことはない。猪瀬氏自身も選挙での票の獲得のために行ったなどとは一切説明していない。したがって、投票支援でないことは明白だ。

 だとすれば、考えられる可能性は1つ、選挙資金の提供を受けることだ。